研究課題/領域番号 |
17H06683
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
芹口 真結子 一橋大学, 大学院社会学研究科, 特任講師(ジュニアフェロー) (70801158)
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研究期間 (年度) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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キーワード | 近世史 / 宗教史 / 仏教教団 / 幕藩領主 / 宗派間対立 |
研究実績の概要 |
本研究では、教学以外の件で諸宗派が対立した場合の幕藩領主による対応のあり方と、宗派間対立の社会的な影響を、浄土宗と真宗諸派が宗派名をめぐって対立した「宗名論争」を題材に検討することで、宗教と政治権力双方が有する近世的特質を明らかにすることを目的としている。具体的には、Ⅰ.仏教教団の動向と政治権力の対応、Ⅱ.宗名論争の社会的影響、Ⅲ.思想面からみる宗名論争の3つの視角から分析する。 平成29年度では、上記のⅠ・Ⅱについて検討するために、基礎的な史料の調査・収集を重点的に実施した。具体的には、大谷大学図書館、本願寺史料研究所(以上京都府京都市)、金沢市立玉川図書館近世史料館、金沢大学附属図書館中央図書館、石川県立図書館(以上石川県金沢市)、大阪府立中之島図書館(大阪府大阪市)、山口県文書館(山口県山口市)に出張し、史料の閲覧・複写・撮影を行った。結果、「浄土宗浄土真宗宗名論争一件書留」・「覚書」(大阪府立中之島図書館柏原家文書)などの宗名論争に関する地域社会の対応が分かる史料や、「諸国所々江遣状留」(安永2年~同4年)・「諸国所々江遣書状留」(安永4年~同6年、いずれも本願寺史料研究所蔵)などの宗名論争における東西本願寺の対応、幕藩領主の対応、地方末寺の動向などを把握することができる史料の収集を行うことができた。併行して、マイクロフィルム『祠部職掌類聚』の翻刻作業を進め、幕府寺社奉行と東西本願寺の江戸触頭・本山との交渉過程を検討している。 あわせて、平成29年度には日本宗教学会(2017年9月16日、於東京大学)、「近世の宗教と社会」研究会(2017年12月23日、於しんらん交流館)、シンポジウム「明治期における国学と教派神道・宗教」(2018年2月16日、於國學院大學)にて口頭報告を実施し、近世宗教史研究に関する意見交換を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概ね研究実施計画で掲げた調査計画の通り史料調査を実施し、研究を進めていく上で有益な史料の調査・収集を行うことができた。これにより、真宗側の動向(本山・教学研究機関・地方末寺それぞれの対応)をめぐっては、幕府側の対応をみて東西本願寺が連携して行動をとっていること、宗名論争に関する進展がみられないなか、地方末寺が本山に働きかけを行い、本山側が対応に苦慮していたことなど、詳細なありようを把握することが可能となった。 今後は、引き続き関連史料の調査・収集を行い、その内容を関連づけながら分析していきたい。なお、浄土宗側の動向については、年度途中の採択となったことの影響もあり、調査地が遠方である真宗側の調査を優先した結果、調査の遅れが発生しているため、平成30年度は浄土宗側の史料の調査・収集も活発に進めたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
概ね、平成30年度も当初の計画に沿って研究を進めていく。まず、「研究実績の概要」で掲げたⅠ・Ⅱに関し、平成29年度の調査成果を口頭報告で発表した上で、その際に得た意見や、さらなる史料の検討を進め、論文にまとめて公表を目指していく。現時点では、平成30年6月16日(土)佛教史学会6月例会で研究内容の口頭報告を行うことが決まっている。本年度中には、この口頭報告の内容を研究論文にまとめて学術雑誌へ投稿したいと考えている。 次に、追加の史料調査(具体的には、大谷大学図書館・本願寺史料研究所・増上寺に複数回出張する)を行い、Ⅰ・Ⅱに関する史料と、Ⅲに関わる史料の収集と分析を進めることによって、宗名論争の展開をめぐる議論の深化を進めていく。
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