本研究では、教学以外の件で諸宗派が対立した場合の幕藩領主による対応のあり方と、宗派間対立の社会的な影響を、浄土宗と真宗諸派が宗派名をめぐって対立した「宗名論争」を題材に検討することで、宗教と政治権力双方が有する近世的特質を明らかにした。 取り組んだ作業として、宗名論争における東西本願寺や幕藩領主の対応、地方寺院の諸動向などの解明に資する史料を入手するために、各地に残る仏教教団関係史料や幕府・藩政史料を調査・収集した。 平成30年度では、引き続き基礎的な史料の調査・収集を重点的に実施した。具体的には、タイムドーム明石(東京都中央区)、増上寺・慶應義塾大学文学部古文書室(以上東京都港区)、大谷大学図書館・本願寺史料研究所・龍谷大学大宮図書館(以上京都府京都市)、成菩提院(滋賀県米原市)に出張し、「宗名一件日記」(増上寺蔵)、「諸国江遣書状留」、「江戸江遣書状留」(いずれも本願寺史料研究所蔵)、「築地輪務日次雑記」(龍谷大学大宮図書館)などの諸史料の閲覧や撮影を行った。以上の仏教教団関係史料などの調査を通じて、宗名論争における東西本願寺や幕藩領主の対応、地方寺院の諸動向などの解明に資する史料を入手し、宗名論争の総合的な分析を行うことができた。 あわせて、平成30年度には佛教史学会(2018年6月16日)、Association for Asian Studies(2019年3月23日)において口頭報告を実施し、宗名論争や近世宗教史研究に関する意見交換を行った。
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