研究課題
本研究の目的は、国際会計基準の適用が及ぼす経済的帰結を検討することである。近年、グローバル化の影響を受けて各国の会計基準の統合化がIFRSを中心に急速に進んでいる。こうした世界的な流れを受けて、日本においても2010年3月期からIFRSの任意適用が可能になり、2017年4月13日現在、142社がIFRSを任意適用済または適用を決定している。本研究の内容は具体的に次の2つに分類される。1つ目は日本企業によるIFRSの任意適用が会計情報の情報的役割に与える影響である。2つ目は日本企業によるIFRSの任意適用が会計情報の契約的役割に与える影響である。平成30年度では情報的役割に与える影響について論文執筆と学会報告を行い、契約的役割に与える影響に関する文献整理を行った。具体的には、日本企業によるIFRS任意適用が投資家間の情報の非対称性に与える影響について分析を行った。分析の結果、日本企業によるIFRS任意適用が投資家間の情報の非対称性に与える影響は、平均的には有意でないことがわかった。しかし、企業の規模によって異なる結果が観察されることも確認できた。また、規模が大きな企業についてはIFRS任意適用に伴い投資家間の情報の非対称性が有意に緩和するのに対して、規模が小さな企業については同適用に伴い投資家間の情報の非対称性がむしろ悪化するという結果が得られた。また、日本におけるIFRS任意適用企業がどのような特性を有するかについても検討した。分析の結果、第一にIFRSの任意適用の動機として①国内外の投資家の注目度が大きい、②IFRSと日本基準の差異が財務諸表数値に及ぼす影響度が大きい、③親子上場の下で親会社がIFRSを適用する場合に同適用に踏み切る傾向が強い、第二に、同適用の効果として、IFRS適用企業は適用前から適用後にかけて、持ち合い関係の縮減に取り組む、という証拠を得た。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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会計プログレス
巻: 20号 ページ: 印刷中
Hitotsubashi University Management Innovation Research Center (MIC) Working Paper Series No. 226
巻: - ページ: 1-27
Kobe University Research Institute for Economics and Business Administration Discussion Paper Series DP2018-21
巻: - ページ: 1-38