研究課題/領域番号 |
17H06690
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
河内 久実子 横浜国立大学, 国際戦略推進機構, 特任教員(助教) (30732664)
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研究期間 (年度) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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キーワード | 国際協力 / ボランティア / ラテンアメリカ地域 / ピースコー(米国平和部隊) / 反米運動 / 安全管理 / ボリビア / ドミニカ共和国 |
研究実績の概要 |
本研究は、国際ボランティア組織ピースコー(Peace Corps)の隊員撤退の要因・経緯・撤退時のプロセスを公文書から分析し、これまで注目されてこなかった政府系ボランティア組織を取り巻く安全に関する検証を行う。安全が懸念される地域における人道支援や開発援助に関する研究は、1990 年代後半に急増した支援従事者に対する殺害、傷害、誘拐事件の増加に伴い発展してきた。しかし、こうした研究は国連職員や欧米の主要な NGO 職員を対象としており(e.g. Fast 2010)、国際ボランティア組織の安全に関する研究は少ない。その主な要因は、アカデミアにおいて、一般市民を途上国へ派遣するピースコーのようなプログラムは、国連や赤十字などと異なり、「政府系ボランティアは、危険が伴う地域には派遣されない」という前提で捉えられているためである。そのため、ピースコーのような市民参加型の国際ボランティア組織の事例は検討されておらず、治安状況が懸念される国における彼らの活動状況や安全管理をめぐる経験が体系的に検討されることもなかった。 このような背景から、2017年度の前半には文献研究を中心に、ラテンアメリカ地域で起こった政変や紛争、災害、対米政策を整理したうえで、ラテンアメリカ地域における反米運動に関する先行研究を調査した。 2017年度の後半は、一次資料収集の為、米国公文書館(NARAII)で調査を行った。公文書館における調査の目的は、ピースコーが撤退した任国と年の特定、および、その要因を探ることであった。収集したデータから、ピースコーの撤退要因を(1) 災害による撤退、(2) 政変による撤退、(3) 治安悪化による撤退、(4)追放による撤退の4つに分類し、次年度における研究で事例としてさらに掘り下げる任国の選定を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2017年度は、ラテンアメリカ地域で起こった政情不安や災害など治安に関する情報を収集することに加え、ピースコーが撤退した任国を特定し、その要因分析と類型を見出すことを主な目的として設定した。よって、この目的はおおむね達成できた。本年度の調査結果をうけて、2018年度はボリビア(追放型)、ドミニカ共和国(政変型)、ペルー(災害型)として個別事例を深め、比較を行う計画である。 他組織との比較という点では、日本の青年海外協力隊の撤退に関する資料を収集し分析にとりかかっている。まだ結論に達していないが、他組織と比較することにより、ピースコーの撤退をめぐる特徴や新たな課題についても見えてきた。
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今後の研究の推進方策 |
2018年度は、米国公文書館およびアメリカン大学のピースコー・アーカイブにおける調査を予定している。公文書館では、任国政府から追放されたピースコー撤退の流れを追うことに加え、大地震が襲ったペルーにおいて、ピースコー事務所がどのように隊員の安全を確保したのかを探る。加えて、ドミニカ共和国に関しては、米国の軍事介入の最中、ピースコー隊員がどのような状況に置かれていたのか、隊員の個人寄贈品が保管されているアメリカン大学のアーカイブにて調査を行う予定である。次年度には、組織レベルにおける分析だけでなく、隊員レベルにおける調査も展開する予定である。 学会発表については、2018年6月の日本ラテンアメリカ学会、および同年11月の国際開発学会において、研究成果を発表する予定である。論文執筆に関しても、ボリビアの事例を取り上げ、論文執筆を構想中である。
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