研究課題/領域番号 |
17H07040
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研究機関 | 高知工科大学 |
研究代表者 |
日道 俊之 高知工科大学, 総合研究所, 助教(PD) (80800995)
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研究期間 (年度) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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キーワード | 共感 / 個人的苦痛 / 共感的関心 / 心拍減速 |
研究実績の概要 |
近年,他者の苦境への共感により共感者自身に生じる苦痛(個人的苦痛)と,苦境にある人への思いやり(共感的関心)が逆U字関係にあると主張されている。しかし,それを実証した研究は少なく,本研究はその実証を目指す。 平成29年度では心拍活動が個人的苦痛と共感的関心のバイオマーカーとして扱えるか検証するために,生理活動測定装置を用いた心理学的実験を行った。参加者は他者がネガティブな感情を抱いている画像,もしくは感情的に中性な画像を見た後,自身に生じている感情を評価した。また,課題中の心拍活動を心電図にて測定した。画像呈示前1秒の平均心拍をベースラインとし,刺激呈示後の0.5秒毎の平均心拍からベースライン時の平均心拍を減算して心拍変化を算出した。さらに,画像呈示直後の心拍変化の最小値(心拍減速)及び減少後の心拍変化の最大値(心拍加速)を算出した。主観的な感情評価と心拍活動指標の関係性を線形混合効果モデルで検討したところ,ネガティブ画像条件において心拍減速が個人的苦痛や共感的関心と逆U字関係にあることが示された。心拍減速は副交感神経系の活動を反映するため,上記の研究結果は副交感神経系と他者への共感が逆U字関係にあるという知見と一致する。このような逆U字関係は比較的長い時間間隔で測定される副交感神経系に関する指標(心拍変動)において示されていたが,本研究では短時間で生じる副交感神経系の活動においても逆U字関係が生じることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成29年度に実施した実験は,心拍活動が共感に関する感情反応のバイオマーカーとなるか検討することが主な目的だった。その結果,心拍減速が個人的苦痛と共感的関心と逆U字関係にあることが示され,心拍活動が十分にバイオマーカーとして使用可能であることを確認できた。また,心拍減速がこれらの感情と線形の関係ではなく逆U字関係にあるという結果は予想しておらず,個人的苦痛・共感的関心の逆U字関係のメカニズムを探るうえで重要な結果になりうる。よって,当初予想していた以上に本実験から重要な知見が得られたと考えることができるため,本研究は当初の計画以上に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度に実施した実験において,心拍減速と個人的苦痛・共感的関心が逆U字関係にあることが示されたものの,これがどのような心理プロセスを反映しているか不明確である。従来の研究において,心拍減速は刺激に関する情報を取り込むための注意配分(定位反応)を反映するとされてきたが,近年の研究では自己制御過程を反映する可能性も示唆されている。今後の研究では,上記の実験における心拍減速が定位反応と自己制御過程のどちらを反映しているか,生理活動測定装置を用いた心理学的実験により検討する必要がある。また平成29年度の研究結果について学会発表や論文執筆を行い,公表する予定である。
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