二重課題干渉は、転倒やスポーツ競技力の低下といった様々な問題を生む。本研究では二重課題干渉を抑制する方法として、認知課題を繰り返し実施する認知課題トレーニングに着目し、その効果的な実施方法の確立を目指す。 平成29年度は認知課題トレーニングの感覚モダリティ (視覚と聴覚) と二重課題に含まれる課題の感覚モダリティの相違が、トレーニング効果に及ぼす影響を検討した。実験では研究対象者を「視覚の認知課題トレーニングを行う群」と「聴覚の認知課題トレーニングを行う群」に振り分けた。二重課題干渉の評価に用いる二重課題は「視覚を用いる認知課題」と「聴覚を用いる認知課題」を組み合わせたものとした。2週間のトレーニングの結果、「視覚の認知課題トレーニング」を行った群では「視覚を用いる認知課題」の二重課題干渉が抑制された。一方、「聴覚の認知課題トレーニング」を行った群でも「視覚を用いる認知課題」の二重課題干渉が抑制された。これらの結果から、認知課題トレーニングと二重課題に含まれる課題の感覚モダリティの相違は、トレーニング効果に影響しない可能性が示唆された。今後は、さらに条件を増やすなどして、より明確な結果が得られるよう追試を行う予定である。 また、上記の実験に加え、視覚を用いた認知課題トレーニングと二重課題を繰り返し実施する二重課題トレーニングの併用効果についても実験を開始している。この実験によって、二重課題干渉をさらに抑制する方法の確立につながると考えている。
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