研究課題/領域番号 |
17J00831
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
長峯 聖人 筑波大学, 人間総合科学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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キーワード | ノスタルジア / 過去と現在の対比 / 喪失の認知 / 後悔の認知 / 心理的成長感 / 社会的なつながり / 反芻特性 |
研究実績の概要 |
今年度は,前年度終了時に計画していた2つの研究(実験室実験,web調査)を実施した。具体的な内容は,以下の通りである。 まず研究4では,「過去と現在の対比」の項目を修正し,「喪失の認知」および「後悔の認知」の項目を新たに作成したうえで,ノスタルジアと精神的健康との関連をそれらが調整するか,およびネガティブな心理特性がノスタルジア体験時におけるそれらの認知を予測するかどうかについて検討を行った。その結果,3つの認知の中でも「過去と現在の対比」がノスタルジアと精神的健康との関連を調整し,ネガティブな心理特性(反芻特性)によって最も予測されやすいことが明らかになった。一方で,「過去と現在の対比」の結果は,想定とは少し異なり,むしろ「過去をポジティブなものとして捉えないこと」がネガティブな変数と関連することが明らかになった。これはつまり,「過去と現在との対比」の不適応的な側面の本質は「過去を現在よりもポジティブに捉えること」ではなく「現在をよりネガティブに捉えること」にあるのかもしれない。他の2つの要因(「喪失の認知」,「後悔の認知」)はノスタルジアを感じたか否かによる点での差はみられたが,精神的健康やネガティブな心理特性との関連はみられなかった。 研究5では,研究4の結果を踏まえて3つの認知の中でも特に「過去と現在の対比」に着目し,研究2で明らかになった「心理的な成長」および「社会的なつながり」の認知が有効な方法と思うかどうかをweb調査によって検討した。その結果,いずれの方法も,ノスタルジア体験における「過去と現在の対比」に対して有効であると評価されることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,前年度に計画していた2つの研究(研究4および研究5)をいずれも遂行することができた。研究4では,想定していた3つのネガティブな認知のうち特に「過去と現在の対比」が重要であることが明らかにされ,研究5ではノスタルジア体験時における「過去と現在の対比」に対して「心理的な成長」および「社会的なつながり」の認知が有効であると評価されやすいことが明らかになった。これらの要因は,前年度の研究2によって明らかにされたものであった。本年度行ったこれらの研究は,申請書時点における研究2および研究3の一部に相当するものであった。上記の研究については,現在論文化を行っている段階である。
前年度は研究計画を変更し研究を追加したため,本年度終了時点の成果は申請書時点の計画とは少し異なったものとなっている。しかし,本年度は前年度終了時点の計画通りに研究を進めることが出来たという点,および本年度の研究が順調に進んだ点を踏まえ,課題はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
採択3年目は,申請書の内容から少し変更したうえで研究を遂行する予定である。 まず,今年度の研究4および研究5を踏まえ,研究6(申請書時点での研究3)を遂行する。具体的には,研究4の結果を踏まえて「過去と現在の対比」の項目を追加し,実際に「心理的な成長」および「社会的なつながり」の認知によって「過去と現在の対比」が生じなくなるか,あるいはそのネガティブな効果が緩衝されるかどうかを実験室実験により検討することとする。 また,最後に研究7として,研究6の結果が日常的な場面でも同様にみられるのかどうかを確かめるための検討を行う。この点については,多様かつより多くのサンプルを対象として統合的な理解を得るために,申請書とは計画を少し変更し,web調査による質問紙調査を行う。
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