研究課題/領域番号 |
17J00989
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
松田 和樹 東京大学, 法学政治学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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キーワード | 法哲学 / 正義論 / リベラリズム / フェミニズム / 親子法 / 婚姻制度 / 家族法 / 同性婚 |
研究実績の概要 |
本年度は、リベラリズムとフェミニズム/クィア理論を横断する正義論を具体化するために、平等論の系譜に属する文献と、契約法の基礎理論に関する文献とを、検討した。また、法制度改革構想を具体化する上で、憲法学や民法学の文献を読み、成人同士の共同生活と婚姻、親子認定、養育について検討した。 昨年度・今年度の研究成果をいくつかの学会、研究会で報告し、フィードバックを得た。6月末の基礎法学研究会では、博士論文に向けての研究構想・計画含めて報告を行った。6月の日本女性学会では、レッセ・フェールと差別禁止法に関する議論を報告し、「排除する自由」とその限界をめぐってより一層検討が必要であることが確認された。9月には、東海ジェンダー研究所プロジェクト研究会にて、とりわけ憲法学で婚姻制度がいかに正当化されてきたかを批判的に検討した。10月の東京法哲学研究会、11月の日本法哲学会では、契約法と再分配システムに関する基礎理論を研究する必要性があることが確認された。12月のジェンダー法学会では、昨年度の研究成果の一部を報告した。 研究成果を論文にして、日本女性学会の査読誌に投稿し、掲載が決定した。保守派の異性間単婚制度擁護論を批判しつつ、フェミニズムはこれを批判する際に、狭義の性差別のみならず異性愛規範や性別二元制をも批判する形で議論を組み立てなければならないということを、フェミニズムの公私二元論批判から引き出すとともに、異性愛規範や性別二元制を批判し損ねていたフェミニストの議論を批判した。 昨年度の研究成果であった論文「同性婚か? あるいは婚姻制度廃止か?:正義と承認をめぐるアポリア」が、南山大学社会倫理研究所の社会倫理研究奨励賞を受賞した。これにあたって、南山大学で受賞記念講演を行い、研究所が刊行する『時報しゃりんけん』に受賞記念論文を投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
博論執筆に向けて必要な作業を確認できたと同時に、その作業を遂行することができた。 ただし、昨年度の「研究実績報告書」の「今後の研究の推進方針」にて、英国での性の政治の展開に関する調査を今年度中に行う旨を記載していたが、来年度に行うこととしたい。今年度にこの費用を賄うことが困難であったことが主な理由であるが、来年度の5月に英国ケンブリッジ大学で開催される学会に出席することとしたのでこれと合わせて英国に赴く方が費用面で節約になるという点も、付け加えておく。これを来年度に回したことによって研究全体の進捗に悪影響がもたらされたということはない。
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今後の研究の推進方策 |
博論の執筆作業を進める。 E. BrakeとC. Chambersの議論を踏まえ、契約法と再分配をめぐる原理的問題をより一層検討する。5月に英国ケンブリッジ大学で開催される学会に二人が参加するようなので、二人の報告をきき、議論に参加する。そしてこの問題について、7月にスイスのルツェルン大学で開催されるIVR世界大会にて研究報告を行う(報告確定済み)。 親子認定に関する原理的問題の検討も行う。 それから、5月に英国に赴く際には、英国の性の政治がとりわけ「家族」という文脈においていかに展開しているかについても実態を見る。そこで具体的にどのような点が法制度改革・意味秩序変革が提示され、検討されているかを見ることを通じて、本研究が提示する法制度改革・意味秩序変革構想をより実りあるものにするためである。そして、こうした状況が日本の性/家族の政治の展開にとってどのような示唆を持つのかを検討するためにも、とりわけ首都圏を中心に、アクティヴィズムの様子を見て、資料を収集する。
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