研究課題/領域番号 |
17J07941
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
大泉 陽輔 京都大学, 法学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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キーワード | 特許法 / 日本法制史 |
研究実績の概要 |
本年度は修士論文に若干の加筆修正をほどこしたうえ、『法学論叢』へ投稿し公表の運びとなった(「近代日本における特許法執行体制の形成過程(一)~(三・完)」(『法学論叢』第181巻第5号(2017年8月)以後順次掲載予定))。該論文は近代日本における特許法執行体制に着目して、立法資料、裁判資料のほか学説の動向や特許局審査官・審判官の構成について分析・検討し、日本近代特許法の性格を描出したものである。特許局(現在の特許庁)は兼任者等を活用することにより技術的判断に堪える人的資源を確保することに成功し、他方大審院は特許局審判例の不統一を是正し、特許局審判官の裁量を広く認め、また、ときに手続上の瑕疵を不問に付すことで執行体制を支えた(特許局による技術的判断と大審院による法的補完)。もっとも、これは実務上の便宜を法律論上の正統性に優先させたものであり、大正期には私権である特許権に関する審判を特許局の管轄とすることを違憲とする学説が登場した。以上をもって本稿は近代日本における特許法執行体制の性格を「技術後進国の発明保護法制」と結論付けた。 引き続いて近代日本における特許権者の特性や特許権の利用実態について零細発明家と企業それぞれの動向を軸に考察を行うべく鋭意資料収集中である。併せてアメリカ特許法の形成過程についても分析・検討を行っている。 また、前述の投稿論文をもとに学会報告の準備を進めており、2018年5月に開催される法制史学会近畿部会例会での発表を予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の手法として掲げた①特許法執行体制の実態(法史的観点からの分析)、②特許権の利用実態(経済史的観点からの分析)という分析枠組みをおおむね維持して検討を進めているため。なお、日本近代特許法の形成と展開をより一層明らかにするため、研究対象を明治期のみならず大正期・昭和期へと広げている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに進めてきた研究は日本近代特許法が定着し得た制度的背景に関する考察であった。すなわち、近代日本における特許法執行体制が実務上の便宜を法律論上の正統性に優先させて成立したことを明らかにした。今後は特許法執行体制が法律論上の正統性を獲得する過程につき検討を行う予定である。
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