①スーザ谷西部を中心に、以下の聖堂の撮影を行った。ノヴァレーザ:Abbazia die SS. Pietro e Andrea、Chiesa ed ex convento di San Francesco、Priorato di San Saturnino、Certosa della Madonna della Losa モンチェニジオ:Parrocchiale di san giorgio martire フォレスト:Cappella della Madonna delle Grazie ラマツ:Cappella di S. Andre 初年度からの調査と合わせ、スーザ谷のゴシック壁画作例をほぼ網羅することが出来た。 ②スーザ谷のアントニウス崇敬の伝播において中心的な役割を果たしたと考えられるアントニウス会ランヴェルソ分院の西正面ポーチのリブヴォールトには、15世紀末にルネサンス様式によって描かれた聖アントニウス伝のフレスコ画が描かれている。アルプス史研究会(於:京都教育大学)で行った研究発表において、本フレスコ画の詳細な記述を行った。 ③15世紀のランヴェルソ分院長モンシェニュは、分院の改築事業を行った他、アントニウス伝図像サイクルを写本や壁画で注文制作させたが、自らの所領地であるパルマ、パドヴァ、トリノの視察を行った際に旅行記を残しており、本地域でのアントニウス崇敬の実態を知る上で重要な文書である。報告者は、共同編集者と共にこれを編纂し、ドイツ語訳を併記して出版した。 ④報告者は、本計画において、スーザ谷に点在する聖堂に残されるゴシック壁画の作例を網羅的に踏査した結果、本地域には多くのアントニウス立像、アントニウス伝図像サイクルが残されており、アントニウス会という枠組みを超え、一般民衆に本聖人への崇敬が伝播していることが分かった。この研究成果をもとに、論文を執筆中である。
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