研究実績の概要 |
(1)広告の出稿の効果は, 2時点で調査が行われ, 2時点間における広告接触の有無と, その間消費行動に関するアンケートデータを用いて識別を試みることがしばしば行われている. しかし, 多くの調査では, 1時点目の前に, すでに広告出稿がなされており, その場合は通常, 1時点目より前に広告接触をしたかどうかが未観測となってしまう. こうした状況で, 1時点目の広告接触の有無によって, 広告効果を区別して識別する問題を考える.これは, すでに商品認知をしている人と, していない人での広告効果を区別して識別することにあたり, 実用上意義があることと考える. これらの問題では, 処置の有無の2値変数が未観測であることから, 分析上許容可能な条件を一つ付与することで因果効果は識別可能なると考えられる.本研究では, 都市部と地方で広告接触の環境が異なるなど, いくつかの異なる母集団分布をもつ母集団が存在することを仮定することによって, 1時点目の広告接触の有無別に広告効果を識別することに成功した. (2)広告出稿では, 観測された処置変数が, 広告接触の有無を表さないケースも存在する.TVCMへの接触は, そのCMが出稿されているテレビ番組の視聴の有無によって判断されることが多いが、出稿されているテレビ番組を視聴しても、CMを注視しているかどうかまでは, 厳密にはわからない. そこで, テレビ視聴の有無のデータのみを用いて, CM接触の有無による広告効果を識別することを考え, 効果の識別のための十分条件の導出を行った.
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