研究成果の概要 |
本研究は, 第二言語(以下L2)を理解する際に, 構文解析や語彙アクセスなどの低次言語処理による認知的負荷がより高次の思考作業に及ぼす影響(外国語副作用)を検証することを目的とした。検証には, 文読み時間, 反応時間の計測のほか, 機能的近赤外分光法(fNIRS) による脳賦活計測, 視線計測を用いた実験を行った。コロナ禍のため実験実施は困難を極めたが, それでも推論に関わる脳部位の賦活がない, 推論による活性化が仮説される刺激への反応時間が促進されないといった結果が得られ, 思考課題がL2で課された場合, 外国語副作用のために適切な推論や判断が制約を受けることを示唆する結果が得られた。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
認知資源配分の問題は,L2言語処理に限られるものではなく,複数の認知的作業が行われる様々な活動において生じる。したがって,本研究から得られる知見は,外国語使用に関わる認知過程に限らず,記憶,学習,問題解決などにおける認知資源の配分とその影響という,より広範な認知過程の解明に寄与し,認知心理学,認知科学の関連領域に重要な示唆を与えることが期待できる。本研究の成果は,L2学習者の言語処理,思考過程のメカニズムのより深い理解に寄与し,外国語教育にも応用しうる知見が得られると期待できる。従って,教育分野へ有益な示唆を与えるものとしても意義がある。
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