本研究課題では大規模イベントデータを対象とした可視化手法の高性能化を目指した。イベントの集合(すなわち時刻の列)を2次元平面上の位置で表現する手法ChronoViewは、大規模データへの有効性が認められる一方で、読み取り可能な情報に関して弱点も見つかっている。そこで3種類の課題に取り組んだ。 [課題A] 周期への依存度の低い表現形式への拡張: ChronoViewを2.5次元表現に拡張し、表現平面に直交する第3の軸で表現周期を表すことで、複数の表現周期によるChronoViewを同時に表現できるようにした。さらに、時間の持つ周期性と線型性をどちらも表現できることを目指し、3次元空間内のコイル状の時間軸に対してイベントを球やシリンダの列で表現する手法を開発した。その際、2次元への投影方法などを工夫するとともに、表現手法としての有効性を評価した。 [課題B] 表現空間の局所的な集中の回避: 表現空間の一部に点が密集するような局所的な集中を回避するために、ChronoViewが基本とする円座標系から一旦離れ、直交座標系における散布図を対象に、表現平面の空間効率を高めるために非線形写像を用いる方式を試作した。空間効率を高める効果が期待できることは分ったが、座標系に基く視覚的表現に矛盾が生じないようなパラメータの求め方に課題があることが分った。 [課題C] 分布を把握できる表現の付加: ChronoViewの抱える表現上のあいまいさを低減することを目指して、ChronoViewのマークをグリフに置き換えるとともに、マークの配置にChronoViewの配置規則と3次元MDSの融合を試みた。さらに、適切なグリフを調べるために、Starグリフと我々が設計したRingグリフとで、時間的特徴の読み取り易さを調べる評価実験を実施した。また、3次元MDSを融合することの効果を調べる数値実験を実施した。
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