研究課題
(1)データ同化システムの準備気象庁領域非静力学気象予報モデルNHMの内部に化学輸送モジュールを組み込んだオンライン化学予報モデルNHM-Chemの開発を進めた。そのNHM-Chemを気象庁アンサンブル気象データ同化システムNHM-LETKFの予報モデル部分と入れ替え、気象観測データと同時に大気微量成分濃度観測データも同化できるシステムを開発した。(2)観測データの準備放射性セシウムの地上濃度観測データとして最も量的に充実している浮遊粒子状物質(SPM)テープフィルタ試料分析データセット(Tsuruta et al. 2014; Oura et al. 2015参照)の収集と分類を進め、データ同化システムの入力用ファイルへの変換作業を行った。また、データ同化システムに入力する気象観測データを取捨選択するため、アメダス地上風観測値およびNTTドコモ地上風観測値のデータ同化が(濃度観測値をデータ同化しないNHM-LETKFシステムにおいて)、放射性セシウムプルームの境界層内移流拡散計算精度向上にどの程度影響を与えるのか調査した。その調査結果は査読付き英文学術論文として発表した(Sekiyama et al. 2017)。(3)アンサンブル移流拡散シミュレーション本研究で用いるアンサンブルデータ同化システムが期待通りの性能を発揮できるかどうかを評価するため、濃度観測値をデータ同化しない状態で気象場アンサンブルを作成し、その気象場メンバーを用いて移流拡散のアンサンブルシミュレーションを実施した。計算結果のヒストグラムや予報スコアの変化を確認することによって、気象観測データと濃度観測データの同時データ同化に技術上の問題点は無いことを確認した。その解析結果は論文投稿中である。
2: おおむね順調に進展している
交付申請書に記載した平成29年度の研究実施計画はほぼ確実に実施することができた。
平成29年度中に開発した化学気象データ同化システムNHM-Chem-LETKFを用い、放射性セシウムの1時間平均濃度観測値(東北地方南部および関東地方で約100地点)および気象庁現業気象観測データセット(アメダス地上風観測データを含む)を同時にデータ同化しつつ、放射性セシウムの移流拡散シミュレーション実験を実施する。アンサンブルメンバー数、空間局所化半径、インフレーション係数などのパラメータを変化させ、最適な設定を調査する。また、濃度観測値と気象観測値(風速、気温、気圧、湿度など)の間の相関係数を人為的に増減させる「変数局所化」という手法により、データ同化システムの最適化を行う。放射性セシウム観測データを用いたシステム開発と移流拡散シミュレーション高精度化を達成した後、火山灰濃度の観測データを用いた火山灰被害予測システムの開発を目指す。
当初計画ではアンサンブルシミュレーション計算結果の保存には研究室所有のRAID装置では容量が全く足りず、助成金によってRAID装置の追加購入が必要であった。しかし、期せずして研究室所有のRAID装置に余裕ができたため、初年度の計算結果はそちらのRAID装置に保存することができた。しかしながら次年度以降には再び研究室所有のRAID装置の容量不足が予測されるため、初年度導入予定であったRAID装置は次年度に購入する計画である。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 8件、 オープンアクセス 7件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 4件、 招待講演 4件)
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