研究課題/領域番号 |
17K00533
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研究機関 | 気象庁気象研究所 |
研究代表者 |
関山 剛 気象庁気象研究所, 全球大気海洋研究部, 主任研究官 (90354498)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | データ同化 / 数値シミュレーション / 気象学 / 大気化学 |
研究実績の概要 |
昨年度に引き続き、移流拡散モデルの精度向上に関する研究開発を進めた。モデル水平解像度を1km以下(サブキロメートルスケール)にした場合にモデル物理過程に組み込まれた乱流拡散と(本来はモデル誤差であるはずだが乱流拡散の代わりに使われがちな)数値拡散のバランスが大きく崩れることが分かり、移流拡散モデルの改良に繋げることができた。 また、複雑地形上の移流拡散シミュレーションの精度を上げるためにはモデル水平解像度を上げざるえないが、解像度向上は計算機負荷の猛烈な増加をもたらす。気象場・濃度場の同時データ同化に耐えうる精度の移流拡散シミュレーションを実現したいが、利用可能な計算機資源は有限であるため、計算機負荷の増加を伴わない解像度向上の手段が必要である。そこで、機械学習の一種である超解像(深層畳み込みニューラルネットワーク)による前処理(移流拡散モデルの入力気象データの高解像度化処理)を試みた。機械学習は学習計算には多くの計算機資源を必要とするが、一旦学習が終了すれば予測計算については計算機資源を(移流拡散モデルと比較すれば)ほとんど必要としない。 この超解像技術によって、日本列島のような複雑地形上において気温、風速、降水量の分布を水平20km解像度の気象解析値(全球予報モデルの出力)から水平5km解像度(メソ予報モデルの出力で精度を採点)へ変換することに成功した。さらに風向についても変換できるよう技術開発を継続中である。この超解像技術が実用化されれば、高解像度移流拡散シミュレーションの計算機負荷が激減し、データ同化計算の精度の向上も期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施計画の半分(気象場・濃度場同時データ同化による濃度場の精度向上)はすでに達成し、残り半分(風速場の精度向上)は現状の移流拡散モデルの精度では無理なことがこれまでに判明している。一方で、移流拡散モデルの精度向上を試みる中で、計画当初には全く考えられなかった深層学習と気象モデリング、あるいは深層学習とデータ同化のハイブリッド化について研究開発を進めることができた。このような全く想定外の部分から新しい科学の種を見つけ出すことが許容されるところも科研費の良い点だと感謝している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究計画は本来昨年度で終了予定であったが、コロナ禍により研究集会が軒並み中止・延期・オンライン化され、研究成果の発表の機会が激減した。そのため事業期間延長の申請を行い認められた。今年度は本研究の成果を研究集会および論文出版により広く公開することに努めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により出張がすべてキャンセルされたため、旅費および学会参加料として計上してた予算が執行できなくなった。 そのため、1年間計画延長を申請し、オンライン学会での研究発表(学会参加料)および論文による研究公開(投稿料)に必要な費用として繰越した研究費を使う。
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