研究課題/領域番号 |
17K00670
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
千住 智信 琉球大学, 工学部, 教授 (40206660)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 再生可能エネルギー |
研究実績の概要 |
再生可能エネルギーの導入量を飛躍的に増加させるための方策として、本研究では海水電解装置を導入した電力システムを提案しており、余剰電力が発生した場合には化学製品を生産することで再生可能エネルギーによる電力供給だけでなく新たな産業創出を各地において展開することが可能である。 提案手法の有効性を検討するために、ディーゼル発電機が導入されている小規模な電力系統において先ずは再生可能エネルギーと蓄電池を導入して運用コストを削減するための最適運用方法について検討を行った。この結果、従来の再生可能エネルギーを導入しないシステムと比較して約10%程度の運用コストの削減が達成できた。 次に現状の各種設備コストを考慮して海水電解装置を導入した電力系統の最適設備構成と最適運用方法の検討を行った結果、再生可能エネルギーを大規模に導入することが可能であり、さらに化学製品の製造も経済的に可能であることが明らかにされた。 海水電解装置は需要電力を自由に調整可能であるため、一種のデマンドレスポンスとして電力系統において認識されることになる。従って、これらの需要電力は比較的長時間の需給調整のみならず短時間における需給電力の調整も可能である。そこで、海水電解装置の電力系統における系統周波数調整能力の可能性を示すために、小規模電力系統を想定した系統周波数制御法を提案した。また、余剰電力に応じて電力料金を変動させるリアルタイムプライシングを活用して海水電解装置の需要電力を調整し、最終的に系統周波数の一定制御を実現した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
海水電解装置を導入した小規模離島の電力系統において蓄電池、ディーゼル発電機、太陽光発電設備、風力発電設備、燃料電池の最適運用により運用コストを最小化することが可能となった。最適化手法は、先ず単目的最適化問題として定式化し、各設備の最適運用を可能とした。 次に現時点における最適設備構成を多目的最適化問題として定式化し、各設備の最適運用と各設備の最適運用方法を明らかにしている。本研究においては海水電解装置を導入しているため、海水電解による化学製品の生産による収入が運用コストの大幅な低減を可能としている事をシミュレーション結果により示している。 系統周波数の制御も海水電解装置を活用してデマンドレスポンスとして活用することで容易に制御可能である。出力価格は時々刻々変更されており、需要家はリアルタイム料金制度を利用して受容可能な電力料金に応じて買電電力量を調整することになる。系統周波数の制御は全ての発電設備と需要家の消費電力を調整することで達成可能である。電力系統に接続されている全ての機器が需要制御や系統周波数制御に寄与することを本研究では導入しているため、各機器の電力調整は小さくすることが可能であり、発電機や負荷の動作に大きな制約を発生させることは無い。系統周波数の制御手法はこれまでにも多数提案されているが、本研究ではモデル予測制御(MPC)を適用して系統周波数を制御している。電力系統の各種制約や非線形性に対しても本制御法は有効に機能するため、系統周波数の制御も十分な性能を有する。
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今後の研究の推進方策 |
現在の小規模離島電力系統では、主にディーゼル発電機を用いて電力供給を行っている。従って、二酸化炭素の排出のみならず重油の輸送や保管のコストが電力価格へ大いに影響する。本研究では、再生可能エネルギーのみにより電力を供給することを検討しているが、現在の離島電力系統の設備から2050年程度の電力系統における電力設備の拡張計画が重要である。すなわち、どのような過程でディーゼル発電機を全廃し、必要な電力を再生可能エネルギー発電設備のみで構成される最適設備構成をどのような過程で整備拡張するか検討が必要である。その際に問題となるのが、2050年までの様々な不確実性の数学的な表現ならびに高速な最適化手法の導入である。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末に国外大学との共同研究のために概算で旅費支給を受けたが最終的な支払額が減額されて旅費の返還が生じた。従って、残金は次年度の旅費として活用する。
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