研究課題/領域番号 |
17K00726
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
藤井 尚子 名古屋市立大学, 大学院芸術工学研究科, 准教授 (30511977)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 病衣下衣 / 開股構造の分類 |
研究実績の概要 |
本研究は、臥床担がん患者の身体的負荷軽減に資する「病衣」デザインの開発のため、臥床担がん患者の病衣をめぐるアセスメントの調査とデザイン学的視点からの衣服形状についての調査の二点を調査し、その知見を持ってプロタイプ開発に繋げる計画としている。平成29年度の当初計画では、前者の対象患者における病衣の問題点を探る現状調査を実施予定していたが、後者についての文献資料にあたる機会に恵まれ、まずは後者の調査を先行することとした。 衣服形状を探る視点の一つである、中国の開襠褌の原型となる構造について、文献調査を行った。日本服飾史の中で下衣の研究は多くはなく、特に、中国の社会・文化をモデルとしていた推古の服制や奈良時代の服飾なども、『延喜式』や『日本書紀』、『万葉集』などに見られる衣服にまつわる記述や、絵画や壁画など美術作品を資料依って検証を行なっている。一方で、現存資料として重要な「正倉院宝物」の中の「閉股袴」と「開股袴」がそれぞれ今日の韓服の女性用袴、男性用袴と対応しているとする研究(原、1983)なども見られた。このように、開襠褌の構造的特徴である「開股」構造は、古く東洋では一般的な構造であったことがわかった。 その上で、研究協力者の鳥丸の協力により入手した中国12世紀~13世紀(南宋時代)のZhao Boyun墓の出土物展示カタログ資料を入手し、資料中の画像及び模式図を手がかりに1/2スケールのモデルを作成した。作成したモデルから下肢の被覆に着目したところ、(1)左右が分離した構造(1-a.平面状の布をコの字状にし巻きつける、1-8.筒状のものを左右それぞれに下から履き入れる)(2)左右が一体化した構造(2-a.腰を支点とした帯状部位で縫接、2-b.股上用の部位を加え縫接、2-c.平面状の布を左・右方向からそれぞれ巻きつけ、中央で割る)といった構造が明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
申請当初の計画では、二期に予定していた研究を初年度に着手してしまったことは、一期に予定した研究の調整ができなかったことが原因である。H29年度の研究成果は当然今後の研究へ生かすものであるが、一方で、対象者の現状と課題を詳細に検討することが必要である。そのため、H30年度は一期(臥床担がん患者の病衣をめぐるアセスメントの調査)を中心に行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
初年度で得た知見は、サンプル作成から検討したものである。それらの知見を裏付ける、実際の構造について調査する上で、国立中国シルク博物館をカウンターパートに現物調査を実施を計画している。但しカウンターパートとの調整ができないなど不測の事態も視野に入れ、東華大学上海紡績服飾博物館も対象に調整を進める予定である。 一方で、臥床担がん患者の病衣をめぐるアセスメントの調査においては、研究対象者に負担をかけないため、名古屋市立大学附属病院看護部との細かな打ち合わせを行い研究調査体制を構築して行く。なお、研究最終段階で計画しているプロトタイプ試着実験についても、研究対象者の負担のかからない方法も、打ち合わせの中で同時に探って行く。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由として、申請当初計画していたH29年度研究がほぼ実施できなかったためである。謝金については、当初聞き取り調査のため計上していたが、それを実施できず使用しなかったことなどが理由である。また、本年度の研究成果のために作成した1/2モデルは、研究代表者が試作したものであり、パターン製作費として計上した一部謝金も使用しなかった。しかし、今後の研究展開に必要なものであり、これら1/2モデルを1/1サイズとし、さらに、着用可能な状態にするため、H30年度以降に研究協力者への謝金を支払う計画である。 また、本年度の成果を踏まえ、H30年度には海外調査を計画しており、旅費及び資料収集のための費用として使用する予定である。
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