研究課題/領域番号 |
17K00726
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研究機関 | 静岡文化芸術大学 |
研究代表者 |
藤井 尚子 静岡文化芸術大学, 文化・芸術研究センター, 准教授 (30511977)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 病衣(下衣) / 臥床患者 / kaidangku 開襠■ / アノニマスデザイン / 更衣動作・排泄動作の介助 |
研究実績の概要 |
本研究では、臥床患者の療養生活で生じる種々の課題のうち、特に従来の病衣(下衣)の構造に起因する身体的・精神的負担の軽減に向け、「アノニマスデザイン」を手掛かりに新たな下衣デザインの検討を行い、提案につなげることを目的としている。 臥床患者にとって病床での更衣動作や排泄動作において介助者のサポートを必要とされるが、筒状構造の下衣は、患者の自尊感情の著しい低下など心身に負担をもたらす一因ともなっている。そこで、患者の精神的負担の軽減に資する下衣のために、従来の既製服などの構造や形態を改造する考え方から離れ、既製服以前の衣服構造および形態に着目し、「アノニマスデザイン」 と称し病衣デザインの手掛かりとする。なかでも「kaidangku(開襠■(■は示偏に庫))」に着目し、文献による予備調査対象について、2018年度中国にて実物調査を実施した。本年度は、実物調査をした複数のkaidangkuのなかから、更衣動作や排泄動作に応用可能な構造を抽出し、それらをプロトタイプとした実験の指針を明確化することを目的に実地調査内容の整理及び論文執筆を行った。 kaidangkuは、今日では中国でトイレトレーニング期の幼児が着用する下衣の一つとして認知されている。先行研究ではこれらと同構造を応用した病衣(検査着)も見受けられたが、本研究の目的である病衣をめぐる患者の自尊感情の保持においては相応しい構造とは言い難いと判断し、西洋式パンツと同様の体形型・筒状構造のkaidangkuではなく、浴衣などと同様の巻衣型を原型とした一部筒状構造となっている「半円形式kaidangku」の応用の可能性について整理した。 なお、「半円形式」構造を応用したプロトタイプによる実験の指針について、疑似介助者による着脱など更衣動作をとおして従来の筒状構造と比較するとともに、患者自身の羞恥心や自尊感情への影響も検討すると定めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現任校に異動したために教育・研究環境が変わったことが、研究がやや遅れている理由の一つであるが、病院など医療機関との連携も少しずつではあるが開拓しつつあるため、今後の研究の進捗に支障はないと考える。しかし、新型コロナウィルスの影響により、医療機関への協力依頼が困難であることも想定され、その際には、当初計画していた研究方法に固執せずに検討を進める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度前半は、まず、実験衣を2点それぞれ2種類作成する。その上で、再現した病床空間において臥床状態の擬似患者に擬似介助者が更衣動作を行い、着脱しやすさについて従来の下衣と比較する。 次に、同じく実験衣による排泄介助において、擬似患者の羞恥心など自尊感情について、官能調査を行う。特に、巻衣構造の開放が前面および背面の場合をそれぞれ比較する。また、疑似介助者にとっての操作しやすさについても同時に調査する。いずれの実験も、被験者は10名を想定し、擬似患者と擬似介助者二人一組の5組で実施を予定している。 これらの実験結果をふまえ、今年度後半は、プロトタイプを作成する。2020年度の計画では、これらのプロトタイプを実際の医療現場にて意見集約することにしているが、新型コロナウィルス対策などで医療機関の協力を得られない場合は、上記の擬似患者および擬似介助者による実験結果に依拠し、本研究の目指すデザイン提案を行うものとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画していたプロトタイプ作成及び予備実験を行えなかったことから、予算計上した人件費・謝金をほぼ使用しなかったため。 旅費についても同様。
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