研究課題/領域番号 |
17K00726
|
研究機関 | 静岡文化芸術大学 |
研究代表者 |
藤井 尚子 静岡文化芸術大学, デザイン学部, 教授 (30511977)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 病衣(下衣) / kaidangku / アノニマスデザイン / デザイン倫理 / デザインとメンタルヘルス |
研究実績の概要 |
本研究では、臥床患者の療養生活で生じる種々の課題のうち、特に従来の病衣(下衣)構造に起因する身体的・精神的負担の軽減に向け、下衣の「アノニマスデザイン」を手掛かりに検討を行い、提案につなげることを目的としている。 今年度は、新型コロナウィルスの影響により、当初の計画通りの研究を進めることができなかった。 しかし、手掛かりとしたアノニマスデザインの一つである「kaidangku(開襠■(■は示偏に庫)」の実地調査内容をまとめた論文(2019年度発表)について口頭発表の機会を得た。実地調査協力地であった北京服装学院(中国)で開催された国際会議「2020年中華民族服飾文化研究国際学術検討会( The International Academic Symposium on Chinese National Costume Culture 2020)」の第3セッション「服飾の伝承とイノベーションデザインの研究(Costume Inheritance and Innobation Research)」に招待され、オンラインにて発表を行った。kaidangkuを応用した病衣(下衣)プロタイプによる実装実験が未完であるため、具体的提言までは言及できなかったものの、デザインの分野からメンタルヘルスに関わりを持つ、今後のデザインにおいて必要不可欠な倫理的視点を有する研究であると高評価であった。 また、本研究と既往研究にあたるこれまでの病衣デザインへの取り組みについて雑誌インタビューに掲載され、海外からも高い興味を寄せられるなど、本年度は病衣研究の成果を開示し、裾野を広げる取り組みに着手できたと考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2020年度は当初計画では最終年度にあたり、本来であれば実装実験を踏まえ、最終的な提案を行うことが着地点であった。しかし、新型コロナウィルスの影響により、研究協力者との連携が難しく、計画を中断せざるを得ない状況であった。
|
今後の研究の推進方策 |
1年の研究延長が許可されたため、2020年度当初計画のとおり、「半円形式kaidangku」構造を応用したプロタイプを作成し、擬似介助者による着脱更衣動作の実装実験を行う。 しかし、いまだに医療機関への協力依頼が困難である状態であることから、まずは研究代表者の所属機関の学生を研究協力者とし、擬似患者と介助者によるに臥床状態での着脱動作の実装実験と、半円形式構造の向き(前面/側面/背面)での心理的負担の違いを明らかにするヒアリング調査を実施し、研究内容をまとめ論文執筆、大学紀要への掲載を目指す。 なお、医療機関での研究協力が可能になることを見越し、依頼のためのプロポーザル(実験衣・使用方法などの手引き)を作成する計画である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初計画していたプロトタイプ作成および予備実験ができず、そのため予算計上した旅費・人件費・謝金をほぼ使用しなかった。一方で、国際学会での発表のための資料翻訳・通訳のための人件費・謝金が支出された。 2021年度は2020年度の計画に加え、医療機関への研究協力依頼のためのプロポーザル資料一式を作成するための予算を計上する。
|