研究課題/領域番号 |
17K00952
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
升本 早枝子 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 特任助教 (30596052)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | プロシアニジン / 腸内細菌 / 老化モデルマウス / SAMマウス / SAMP8 |
研究実績の概要 |
1,腸管および肝臓組織の遺伝子発現解析 SAMR1およびSAMP8にサンプルを摂取させ、摘出した腸管および肝臓組織からtotal RNAを抽出し、cDNA を合成した。得られたcDNA をSYBR Green を用いた定量Real-time PCR に供し、遺伝子発現解析を行う。腸管においては炎症性サイトカイン(TNF-α、IL-6)、腸管バリア機能制御因子(Occulidin、ZO-1)、短鎖脂肪酸受容体(GPR41、GPR43)、胆汁酸受容体(TGR5)などの遺伝子解析を行った。肝臓においては炎症性サイトカイン(TNF-α、IL-6)、LPS 受容体(TRL4、CD14)、抗酸化関連因子(iNOS、SOD、GPX、CAT など)、サーチュイン関連因子などの遺伝子発現解析を行った。肝臓組織においては、SAMR1群とSAMP8群での差は認められたものの、APC摂取による影響は認められなかった。腸管ではAPC摂取により腸管バリア機能制御因子(Zo-1)の発現増加が認められた。 2.盲腸内容物および糞便による腸内細菌叢の解析 飼育48週目の解剖時採取した盲腸内容物からDNAを抽出した。解剖時採取した盲腸内容物からDNAを抽出した。盲腸内容物から抽出されたDNAを鋳型とし、16S rRNA遺伝子領域をPCRにて増幅し、得られた精製DNAを用いて次世代シークエンサーにより腸内細菌叢の解析を行った。これまでの報告より、Akkermansia菌の変動を予測していたがSAMR1およびSAMP8いずれにおいてもAkkermansia菌が検出されなかった。APC摂取によりSAMP8群ではBacteroides属の比率増加が認められた他、いくつかの菌種で変動が認められた為、解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
特にトラブルが無かった為、概ね順調に進んでいる。しかしながら、遺伝子発現解析では、多くの遺伝子を測定したにも関わらず想定外の結果となった事から、作用機序をもう一度考察し直す必要があると考えている。また、腸内細菌叢解析においても、過去に解析を行ったことのあるC57BL6マウス等と比較すると、菌種が非常に少なかった。これがマウス種によるものか、解析手法によるものか慎重かつ十分な検討が必要であると考えており、異なる受託機関への解析依頼を検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
1.脳組織におけるアミロイドβ蓄積抑制効果の検討 飼育48週目の解剖時採取した脳組織よりRNAを抽出し、cDNAを合成する。アミロイドβの蓄積に関与する酸化ストレス関連因子およびインスリン受容体などの遺伝子発現を定量Real-time PCRにより解析する。また、バリア機能関連因子についても遺伝子発現解析を行う。さらに飼育48週目、解剖時に採取した脳組織のアミロイドβ量を、ELISA法を用いて測定する。また、アミロイドβ蓄積の免疫染色による組織学的評価を行う。 2.尿及び盲腸内容物におけるメタボローム解析 および腸内細菌叢の再解析 飼育24週、48週目に採取した尿および48週目の解剖時に採取した盲腸内容物をHPLC-TOF/MS分析に供し、代謝物の解析を行う。短鎖脂肪酸の測定は短鎖脂肪酸測定キットを用いてHPLC法により測定する。さらに、四重極・飛行時間型質量分析計を用い、盲腸内容物中の代謝物を分析する。また今回得られた腸内細菌叢の結果として、菌種が乏しいことや変動が少ないなど、慎重に検討すべき点が多くあった為、盲腸内容物から得られたDNAを用い、再解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
他大学への転職が決定していた為、無理に実験を進めず1月末までに一時とりまとめた。その為、4万円ほどの繰越が生じた。31年度は福島大へ移り、新設の学類の為、予算や設備などが十分でないことから、不足している機器や消耗品購入に充てる予定である。
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