1. 飼育48週目の解剖時採取した脳組織よりRNAを抽出しcDNAを合成し、アミロイドβの蓄積に関与する酸化ストレス関連因子およびインスリン受容体などの遺伝子発現を定量Real-time PCRにより解析した。また、バリア機能関連因子及び炎症関連因子についても遺伝子発現解析を行った。さらに飼育48週目、解剖時に採取した脳組織のアミロイドβ量を、ELISA法を用いて測定した。アミロイドβの蓄積に関しては、controlであるSAMP8における蓄積が認められず、同様に他の群でも蓄積は認められなかった。インスリン受容体についても差は認められなかった。バリア機能関連因子はZo-1において、プロシアニジン摂取により発現の増加が認められた。また、炎症関連因子であるIl-6およびTnf-αは、プロシアニジン摂取による有意な減少が認められた。 2. 脳組織における遺伝子発現にプロシアニジン摂取による差が認められた為、血清中のIL-6およびTNF-αをELISA法を用いて測定した。その結果、プロシアニジン摂取群において血清中TNF-α量の有意な減少が認められた。また、血中のLPS量も同様にプロシアニジン摂取群において有意に低値を示した。 3. 前年度に得られた腸内細菌叢の結果として、菌種が乏しいことや変動が少なく、慎重に検討すべき点が多くあった為、盲腸内容物から得られたDNAを用い、次世代シークエンサーによる再解析を行った。その結果、門レベルではプロシアニジン摂取によりActinobacteria、Bacteroidetesが有意に増加、Firmicutes、Proteobacteriaは有意に減少した。 以上の結果から、プロシアニジン摂取による腸内細菌叢の変動及びバリア機能の向上、血中の炎症関連因子の減少などが、認知機能に影響を及ぼした可能性が考えられた。
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