昨年度までに開発してきた情報セキュリティシミュレータのユーザビリティ評価等に基づいて再度システムの改善を行い,改めてその教育効果について検証を行い,また,本課題の全体的な総括を行った. 当初予定していた,小・中学生,一般社会人等向けのセキュリティイベントが新型コロナウィルス感染拡大の影響により実施ができなかったが,筆者が担当する情報セキュリティ科目の演習に活用し,受講者のアンケート調査および,課題レポートの達成度評価を行うことでその効果を検証した.アンケート結果より,本課題を実施する以前に同科目で実施した場合と比較して,実践的な課題解決についての興味が大幅に向上したことが明らかとなった.これは,本システムにより仮想的環境において,セキュリティ被害やその防御法についてよりリアルに演習することができるようになったためと考えられる.なお,他のアンケート項目において,以前のものよりも劣った評価は得られなかった.さらに,新たに追加したCTFライクな課題演習については学生の興味は特に高くなった. これらのことより,本システムを演習に導入することで相反した効果を与える項目は認められなかった. また,レポートの達成度については,本課題を実施する以前の評価と比較して,平均して5%から10%の向上が見られた.演習内容については一部改善されているものの,アンケート評価の結果と併せて,本システムの活用による教育効果が表れているものと考えられる. 以上の結果から,本課題で開発した情報セキュリティシミュレータは教育効果向上に寄与し,今後このシステムを活用していくことで,高い教育の質の保証を行うことができるものであると言える.
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