研究課題/領域番号 |
17K01413
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
高井 昭洋 愛媛大学, 医学部附属病院, 講師 (70632917)
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研究分担者 |
高田 泰次 愛媛大学, 医学系研究科, 教授 (10272197)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 上方照明システム / 腹腔鏡手術 / 陰影の手がかり |
研究実績の概要 |
1.照明デバイスの作成について 当初予定していた地元企業との共同研究において,照明デバイス作成がうまく進まなかった.そこで,平成29年6月に大阪商工会議所主催の「次世代医療システム産業化フォーラム2017」にて照明デバイス作成のための医療機器製造企業とのマッチングを目的に講演発表をした。その後、電子デバイス開発事業を行う日本モレックス合同会社(神奈川県)と個別面談を行い、光学機器開発を得意とする光電気LEDシステム株式会社(鳥取県)を加えた研究開発体制の構築に至り,これら2つの企業と愛媛大学の3者で秘密保持契約を締結(平成30年1月30日)し共同研究を開始した.これまでの協議の中で,ヒト用照明デバイス作成における課題解決のための提案をいくつか受けており,平成30年度秋までにヒト用照明デバイスの試作品作成を行う予定である. 2.Cadaverと大型動物による本システムの検証のための前臨床的腹腔鏡手術 Cadaverによる腹腔鏡手術には,実臨床での手術とはいくつか異なる点がある.研究責任者らは,本研究のみならず,手術手技研修としてもCadaver手術の実績を積んできておりこれらのノウハウは十分蓄積されてきており,ヒト用照明デバイスの試作品が完成すれば,いつでも検証手術が可能である.平成29年度は,ヒト用照明デバイス作成が遅れているため,大型動物による検証手術は,生命を犠牲にするという倫理的観点から施行していない.一方,動物実験用に開発された照明デバイスを用いて,これまでに行っていなかった3D内視鏡でのCadaver(ご遺体)による検証手術を行った.現時点で,3D内視鏡においてさらに立体感が増す効果があるわけではなかった.しかし,陰影の手がかりがあることで,手術映像のキメが細かくなり,非常に美しく,拡大視効果も相まって,リアルでかつ顕微鏡で観察したような映像が得られることがわかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1.照明デバイスの作成について 当初予定していた地元企業との共同研究によるヒト用照明デバイス作成において,臨床現場で求められるデバイスのスペックについて共有し,それに応えるようなデバイスの作成を試みていたが,十分なデバイス作成には至らなかった.そこで,平成29年6月には地元企業の枠を超えて,本システムに必要なデバイス作成を行ってもらえる企業を募り,平成30年1月に企業2社と愛媛大学の3者で共同研究契約に至った.現在までに,これまで開発した動物用照明デバイスをもとに,照明範囲のシミュレーションを行い,ヒト用として求められるスペックを持つ照明デバイスの開発に向けての協議を行った. 2.Cadaverと大型動物による本システムの検証のための前臨床的腹腔鏡手術 平成29年度はヒト用の照明デバイスの作成には至らなかった.したがって,生体としての大型動物による検証手術は,生命を犠牲にするという倫理的観点から施行していない.照明デバイスが開発されたならば,大型動物に対する手術環境は整っているために,手術メンバーに必要な研究協力者の日程調整を行い,検証手術は可能である.一方,本研究は,Cadaver(ご遺体)による検証手術を,愛媛大学医学部手術手技研修センターにおける医学研究として倫理委員会の承認を得ているため,ヒト用照明デバイスの試作品が作成されたならば,すぐに検証手術を行うことができる.
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今後の研究の推進方策 |
1.照明デバイスの作成について ヒト用腹腔鏡照明デバイスの試作品として,三者で協議を重ね試作装置3~4ヶを試作する.目標とする装置の仕様として,①形状と大きさ:腹腔内への挿入をより容易にするため現状の厚み(17mm)をさらに薄くする,②輝度:現状先端から11cmで12,000ルクスを通常の腹腔鏡照明(先端から10cmで38,000ルクス)に近づける,③発熱対策:現状デバイスでは30分後に56℃まで温度が上昇することを熱を逃がすなどにより抑制する,④安全性確保:薬事承認を得るための安全性を検証する、を設定する.前述の目標を達成するための試作品の開発を,光電機株式会社が中心になって,試作装置案を策定(6月~7月)し,協議の上装置3~4個を試作する(7月~9月).照明デバイスの形状,LEDの配置あるいは発熱の問題を解決するため,製作側のデバイス開発の技術的問題と医療者側のこれまでの手術経験の情報を綿密に共有することで,解決策を見つけていく. 2.Cadaverと大型動物による本システムの検証のための前臨床的腹腔鏡手術 デバイスが作成されたならば,10月から2月にかけて,Cadaver3体,大型動物3頭ほどで腹腔鏡手術を行い,本システムの有用性および実臨床での実行可能性について評価を行う.それぞれにおいて3~4の術式を行い,合計18~24回の手術を行う.評価は研究分担者らへの聞き取りおよびアンケート調査で行う.その後,2月から3月にかけて検証結果に基づき,プロトタイプの仕様を決定する.3月には,本仕様に基づいて特許出願し,また、同仕様について,独立行政法人医薬品医療機器総合機構PMDAにて薬事承認のための事前相談を日本モレックス合同会社とともに行う.
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