研究課題/領域番号 |
17K01439
|
研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
岸野 智則 杏林大学, 保健学部, 教授 (20343478)
|
研究分担者 |
森 秀明 杏林大学, 医学部, 教授 (10239618)
四倉 正之 杏林大学, 保健学部, 教授 (10240368)
川村 直弘 杏林大学, 医学部, 講師 (10406986)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 脂肪 / 超音波 / 生活習慣病 / SWE / アディポカイン |
研究実績の概要 |
本研究は、①超音波のShear Wave Elastography (SWE) の技術を脂肪組織に適用してその「質」を計り、病勢を知る新たな方法を確立することを目的とした。更に、②病勢を最も示す脂肪の場所を明らかにし、③合併症を起こす危険のある境界値を特定することを目的としている。 これまで、脂肪組織・肝臓・心臓を超音波診断装置で観察し、生活習慣病や合併症が発症しようとする力、すなわち「病勢」との関連性を調べてきた。その結果、腹部の内臓脂肪が厚くなるほど、生理活性物質(アディポカイン)の一つ、脂肪酸が病勢を強める組成へ変化し、心臓周囲の脂肪が厚くなるほど心臓の収縮力が弱くなることが明らかになった。 このように脂肪は、生活習慣病の病勢と関連し、超音波検査で容易に観察できる器官である。血中アディポカインなどで調べる病勢を超音波検査で捉えることができれば、身体に苦痛のある血液検査を強いることなく病勢を把握できると考えた。一方、超音波検査には、SWEのように臓器の硬さをみる技術があるが、組織の「質」をみる手段としての新たな可能性を考えた。 具体的には以下を予定している。①脂肪のSWE値を計測し、血液の1) 脂肪酸組成のほか、2) 種々のアディポカイン値との相関性を調べ、SWEの計測値から病勢を数値で示す方法を確立する。 ②1) 腹部の内臓脂肪と皮下脂肪、2) 心臓周囲の心外膜下脂肪と心膜外脂肪について比較し、検査すべき最適部位を決める。 ③ 1) 健常者 / 2) 生活習慣病+合併症なし / 3) 生活習慣病+合併症あり の対象者を比較し、生活習慣病を発症する危険 1)→2)、合併症の現れる危険 2)→3) を示す境界値を明らかにする。 平成29年度は、対象とする母集団の集積を開始し、年度末までに約12症例を集めた。今後も集積を継続し、次年度以降からの解析につなげる予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
検討対象とする母集団は順調に集積されつつあるが、平成29年度後半に開始予定であった「SWEと清潔習慣病の病勢指標の関連性に関する検討」は、まだ始められていない。これは、以下に示すその他の研究発表(雑誌論文および学会発表)の準備に相応の時間を割くことになったためである。 平成30年度には、更に1年間母集団の集積を継続するとともに、早々に解析を開始する予定である。また、学会や論文投稿を通じて、その成果を報告したいと考えている。 一方、※うまくいかない場合の対応 として予定していた、「脂肪肝関連遺伝子や炎症関連遺伝子が、生活習慣病におよぼす影響」に関しては、母集団が集積されつつあるが、対象者に遺伝子検査の了解を得る検討であるので、解析に十分な対象数は未だ確保できておらず、今後も引き続き母集団を集めつつ、適宜解析を開始する予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
Ⅰ.脂肪の超音波検査で生活習慣病の病勢を計る ① 脂肪のSWE値を計測し、血液の1)脂肪酸組成のほか、2)種々のアディポカインの値との相関性を調べ、SWEの計測値から病勢を数値で示す方法を確立する。② 脂肪の部位により病勢との関与が異なることを明らかにしているので、1)腹部の内臓脂肪と皮下脂肪、2)心臓周囲の心外膜下脂肪と心膜外脂肪について比較し、検査すべき最適な場所を決める。③ 1)健常者 / 2)生活習慣病+合併症なし / 3)生活習慣病+合併症あり の対象者を比較し、生活習慣病を発症する危険(1→2)、合併症の現れる危険(2→3) を示すSWE値を模索する。 前記のように、データの解析において当初の予定よりもやや遅れているので、平成30年度は母集団の集積を継続しつつ、解析を中心に研究を推進する予定である。上記①、②は同時に結果が得られるものと予想される。 Ⅱ.脂肪肝関連遺伝子や炎症関連遺伝子が生活習慣病におよぼす影響(※ 「上記Ⅰが計画通りに進まない時の対応」として申請時から予定) PNPLA3をはじめとする遺伝子多型(SNP)と超音波で計測した脂肪組織との関連性などを解析する予定である。遺伝子を扱う内容であるので、承諾を得ることのできる対象者の数が上記Ⅰに比し少なくなるので、データは適宜解析しつつ、研究期間の3年間を通じて母集団を集積する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
前記 「7.現在までの進捗状況」に述べた理由により、初年度は超音波検査と血液採取など母集団の集積が中心となった。今後は、これら血液検体を基に、生活習慣病の病勢を反映する各種アディポカインを測定する予定である。測定にはELISAを中心とする検査法を考えており、その検査キットの購入に研究費の多くを要することになると予想され、平成30年度以降への持ち越しとなった。また、当初は初年度からの予定していた、研究発表としての学会出張や雑誌論文投稿に要する英文校正費などについても、同様の理由から、平成30年度以降の使用が中心になると予想される。
|