研究課題
本研究は、超音波検査技術を脂肪組織に適用し、計測値を含めたその所見を評価することで、病勢を知る新たな指標を確立することを目的とした。過去には、脂肪組織・肝臓・心臓を超音波診断装置で観察し、生活習慣病やその合併症が発症する力、すなわち「病勢」との関連性を評価してきた。その結果、腹部の内臓脂肪が厚くなるほど、脂肪組織から出る生理活性物質(アディポカイン)の一つである脂肪酸が病勢を強める組成へと変化し、心臓周囲の脂肪が厚くなるほど心臓の収縮力が弱くなることを明らかにしてきた。上記のように脂肪組織は、生活習慣病の病勢と密接に関連する上、侵襲性のない超音波検査で容易に観察できるため、脂肪の超音波検査で病勢を捉えることができれば、生活習慣病の血液検査所見を反映する有力な情報を得ることができるだけでなく、侵襲性のある検査の代替法となる可能性もある。一方、脂肪組織は部位により生活習慣病の病勢との関与の程度が異なる。そのため、腹部の内臓脂肪・皮下脂肪・腎周囲脂肪や心臓周囲の心外膜下脂肪などと、血液検査所見との関係を比較し、超音波で検査すべき最適部位を明らかにすることなどを目的とした。経過中、検体保存冷凍庫の故障や、周知のコロナ感染拡大の影響を受け、度重なる研究の中断や研究期間の延長を余儀なくされたが、最終年度までに研究目的の根幹部分は達成し、腹部内臓脂肪と、それに次ぎ心外膜下脂肪が、生活習慣病の病勢をより反映する脂肪組織であることを明らかにして報告した。更に、生活習慣病の合併症の一つである脂肪肝に伴う肝傷害の有無を判別する超音波検査指標が明らかになりつつある。
すべて 2022
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Metab Syndr Relat Disord
巻: 20 ページ: 148-155
10.1089/met.2021.0082