研究課題/領域番号 |
17K01925
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研究機関 | 京都文教大学 |
研究代表者 |
松井 愛奈 京都文教大学, 臨床心理学部, 准教授 (40377007)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 保育環境 / 想定外 / 遊び / 子ども / ニュージーランド / 保育者 / リスク / 発展 |
研究実績の概要 |
本研究は、保育における想定外の使い方に寛容なニュージーランド(以下NZ と表記)と日本の比較検討により、「想定外の使い方と、子どもの発想力や遊びの発展との関連性を捉える枠組みの構築」「想定外の使い方が生まれやすい環境要因を特定」「想定外の使い方に寛容であることを支える要因の明確化」「リスク・ベネフィットアセスメントを盛り込んだ、想定外を生かして子どもの遊びを育む環境構成や援助のための具体的な指標作成」を目的としている。 本年度は、日本とNZの保育現場における観察調査、NZの保育者に対する面接調査を実施した。その結果、「想定外の使い方」について、以下3点が見出された。(1)NZでは「外に持ち出すことを禁止しているのはパズルとガラス製品のみ」など室内外を問わずどこでもものを使用できる環境にあり、遊びの発展につながる可能性がある。(2)用途が定められていないものが豊富に用意され、元より多様な想定外の使い方を意図して置かれていた。それらの特徴や使われ方、保育者の意図等を日本とNZにおいて吟味していく必要がある。(3)NZでは「使い方のルールは安全性を確保するもののみ」など、安全であれば多様な使い方が認められる可能性が高い。「NZの厳しい基準の下で環境自体が安全に作ってあり、危険なことはあまり起きない」という見解もあり、日本とNZの設置基準を比較検討する必要がある。 「遊びにおけるリスク」について、以下3点が見出された。(1)どの保育者も子どもの発達におけるリスクの重要性を即答した。(2)子どもの学びのために遊びのリスクを推奨し支援する保育者の役割について語られた。(3)リスクが重要な理由や、安全確保のための園の取り組みについて、保護者とのコミュニケーションが図られていた。今後さらにNZでリスクに積極的になれる背景や、保護者とのコミュニケーションの内容等を比較検討していく必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国内における観察調査を実施し、事例の収集を行った。 ニュージーランドにおける観察調査(就学前施設5園、小学校2校)、および、保育者に対する面接調査(園長2名、主任3名、保育者1名、元保育者1名、計7名)、小学校教員(校長1名、元校長かつ現職教員1名、計2名)を実施した。 以上の調査データをもとに分析を行い、その結果と考察について、2018年5月にポスター発表を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
(1)日本における調査 観察調査を進め、事例の収集と分析を継続する(2019年度まで)。想定外の使い方に関する質問紙調査を実施し、分析を行う(2018年度~2019年度)。 (2)ニュージーランドにおける調査(2018年度) 観察調査(本年度調査対象とした就学前施設・小学校に加え、可能なら新たな園を追加)を実施し、事例の収集と分析を進める。質問紙調査(日本の質問紙の英訳版)を実施し、分析を行う。 上記の調査結果をもとに、日本とニュージーランドの比較検討を行い、学会発表、論文執筆を行う。
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