研究課題/領域番号 |
17K01989
|
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
地村 弘二 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 准教授 (80431766)
|
研究分担者 |
中原 潔 高知工科大学, 情報学群, 教授 (50372363)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 遅延報酬 / 機能的MRI |
研究実績の概要 |
液体報酬を用いた報酬探索課題をデザインした.この課題では,健常ヒト被験者が,遅延する液体報酬を待つ経験試行と,その経験に基づいて再び遅延する液体を待つ探索試行を繰り返していく.経験試行では被験者は報酬が得られるまで待つことが要求され,探索試行では,報酬が得られるまで遅延時間を待つことができるし,待つのをいつでもやめて次の試行に移ることができる.この課題遂行中の健常ヒト被験者の脳活動を,機能的MRI撮像により測定した.この実験で重要になるのは,遅延時間中の脳活動変化であるので,高い空間解像度の撮像が可能になるマルチバンド加速撮像を行なった.被験者がMRI撮像中に液体を飲むことにともない,被験者の頭は動く.その動きに由来する画像の雑音を最小化するためのオフライン処理方法を開発した.行動解析の結果,被験者は経験試行で長い時間待ち,獲得した報酬が少ないときほど,後の探索試行で待つのをやめることが多かった.そして,経験試行と探索試行の遅延時間における脳活動動態を,期待効用モデルにより記述した.経験試行中,被験者はいつ報酬が得られるか事前にわからない一方で,過去の経験からある程度は予測するという前提に基づいて,ベイズ推定によりモデル化した.探索試行では,経験試行で報酬が得られた時刻から,どれだけ離れた時刻で報酬が得られるかを期待する確率分布を,ベイズ推定によりモデル化した.経験試行では,期待効用モデルで予測される脳活動が,前頭前野の頭極部に観察された.探索試行では,報酬が得られるまで待ったとき,同様に前頭前野の頭極部に期待効用モデルで予測される脳活動が観察された.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
遅延する液体報酬を用いた意思決定課題遂行中のヒト被験者の脳活動を断続的に計測するという実験を2実験完了させた.異時的意思決定の実験は,データ解析が終了し,おおむね良好な結果を得て,原著論文を脱稿する間近になった.報酬探索課題では予備的解析からおおむね良好な結果を得ている.
|
今後の研究の推進方策 |
2019年度は最終年度であるので,報酬探索課題の解析をすすめて,原著論文執筆に着手する計画である.また,液体報酬を用いた異時的意思決定課題の論文の原著論文を投稿する予定である.合わせて,学会発表等を行なっていく.
|
次年度使用額が生じた理由 |
2018年度末の時点で,計画当初の予想と比較して,画像データの量が少なく,計算機環境を既存の設備で間に合わせることができたため次年度使用額が生じた.しかし本年度,データ量は当初の予想どおりに増大する予定であり,データ増大にともなう計算機・コンピュータ環境・ディスク装置の整備,解析の人件費,行動実験のデータ収集に必要な人件費に充当する予定である.また,学会発表の旅費,出版費用に拠出する予定である.
|