研究課題/領域番号 |
17K02037
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研究機関 | 専修大学 |
研究代表者 |
井上 幸孝 専修大学, 国際コミュニケーション学部, 教授 (20399075)
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研究分担者 |
田辺 加恵 立命館大学, 経済学部, 教授 (50580479)
大原 志麻 静岡大学, 人文社会科学部, 准教授 (80515411)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 聖ヤコブ / カトリック / 聖人崇敬 / 歴史 / スペイン / メキシコ |
研究実績の概要 |
2020年度は新型コロナ感染症の流行の影響により、国内外の移動、とりわけ海外への渡航に関してきわめて大きな制約を受けることになった。具体的には、スペインやメキシコへ渡航しての現地調査や、当初からこの年度に予定されていた国外での研究成果の発表は見送らざるを得なかった。 とはいえ、2019年度までに収集していた資料やデータを駆使して、引き続き研究を前進させることができた。本研究課題全体としては、オンライン会合や電子メールでのやり取りを通して、各自の研究成果や意見交換を行い、研究代表者と研究分担者それぞれが本課題全体の中での役割を位置づけながら、研究を深化させ、各自の研究成果を公表するなどした。 具体的には、井上は、アメリカ大陸のスペイン植民地における聖ヤコブ崇敬の定着過程について、メキシコを中心としつつも同じ副王領となった中米の事例も含めて分析を進め、その成果を公表した。さらに、先住民史料に関する聖ヤコブの記述についても検討を進めた。田辺は、中世スペインにおける聖人崇敬の比較を行うために、それらに関する資料を収集した。また、前年に続き14世紀の「聖ヤコブの書」諸写本のミニアチュール比較研究を行ったのに加え、サンティアゴ巡礼の観光的側面を歴史社会学的に捉えるために各種資料の分析を行った。大原は、唯一の道の世界遺産である姉妹道サンティアゴ巡礼路と熊野古道について、それぞれの初期中世における起源と盛期そして衰退の過程についての比較研究を行った。また実際に「二つの道の巡礼者」の完歩証を得ることで、「巡礼」の現況を明らかにした。 これらの研究の進展により、中世スペイン、近世スペイン、植民地時代メキシコという時間的・空間的広がりの中での聖ヤコブ崇敬に関する比較が進み、次年度(最終年度)における研究成果の統合への道筋をつけることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究課題の進捗としては、おおむね順調に進展している。ただし、2020年度は新型コロナ感染症が流行したため、海外での調査およびこの年度に予定していた海外での研究発表は叶わなかった。やむを得ない状況のため、海外で研究発表を行う点については見送りとし、次年度の日本語での成果公表に盛り込むことで、研究成果を公表することとしたい。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となる2021年度は、これまでの研究成果の統合およびその成果を活字にして公表することを本研究課題の中心とする。したがって、全体としては、連絡を密にとって意見交換を進め、中世スペイン、近世スペイン、植民地時代メキシコという時間的・空間的にも広がりのある研究対象について、相互の関係性を深め、細部を詰めていくこととしたい。パンデミックの終息のめどが立たないことから、会合や議論は電子メールやオンライン会議システムを最大限に活用して行い、年度末には研究代表者と研究分担者3人の共著という形で研究成果を公表する予定である。 個々の研究課題については、昨年度までの成果をまとめるのにとどまるのではなく、相互の比較の結果を生かして必要な情報や分析を追加し、本研究課題全体としての成果の統合を積極的に進め、最終的な成果公表につなげる予定である。井上は、先住民史料の記述をさらに探求すると同時に、スペイン支配下での先住民村落の再編に関する追加情報を収集して整理する。また、スペインとの比較でメキシコの聖ヤコブ像の考察をさらに深める。田辺は、聖母マリア崇敬の高まりの中で、中世中期の聖ヤコブ崇敬がどのように中世後期のそれにつながっていくのか、そして聖ヤコブ崇敬は他の聖人への崇敬表象にいかなる影響を与えたかを意識しながら、史料や図像見直しや分析を進める。大原は、熊野古道センターの全面的支援のもと、「北の道」と伊勢路の比較研究を行う。また補助事業期間の研究成果報告に注力し、中世末期のサンティアゴ巡礼の衰退、近世における王権との関係性の実態、聖ヤコブ図像の変容や、サンティアゴ巡礼路と熊野古道の比較についてまとめ刊行する。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外渡航が困難だったため。
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