研究課題/領域番号 |
17K02157
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
森 一郎 東北大学, 情報科学研究科, 教授 (00230061)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 世界への愛 / ハイデガー / アーレント / 哲学の可能性 / 技術とは何だろうか |
研究実績の概要 |
本研究の二年目にあたる2018(平成30)年度は、前年度の成果を踏まえつつ、着実に「世界への愛」という研究テーマが進捗した一年であった。 まず、2018年8月に、単著『ハイデガーと哲学の可能性 世界・時間・政治』を法政大学出版局から出版した。これは、森のこれまでのハイデガー研究の蓄積を一書にまとめて世に問うたものであり、2008年刊の『死と誕生 ハイデガー・九鬼周造・アーレント』に続く、大がかりな研究成果と言えるものである。 続いて、2019年3月には、マルティン・ハイデガー著『技術とは何だろうか 三つの講演』を講談社学術文庫の一冊として出版した。これは、ハイデガーの技術論関係の最も重要な講演テクスト三篇を選んで、新しく訳出したものであり、読書界で画期的新訳として話題となっている。 2018年8月には、アメリカ東海岸へ資料収集を目的として出張し、ニューヨーク州北部のバード大学にアーレント文庫を訪ねた。アーレントセンターの所長バーコヴィッチ氏とも研究交流し、実りある訪問となった。 また、2018年3月に出した『現代の危機と哲学』(放送大学教育振興会)の内容のエッセンスを、「死んだら終わりか?」という試論にまとめ、2018年6月25日付で、韓国の『東洋日報』紙にその韓国語翻訳を寄稿した。 さらに、2018年9月には、石川県かほく市の西田幾多郎哲学記念館で、西田幾多郎哲学講座を二日連続で担当し、「核時代のテクノロジー論」という題する二回講演を行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
30年にわたる研究成果をまとめて、単著『ハイデガーと哲学の可能性 世界・時間・政治』として上梓できたことは、森の「世界への愛」をめぐる存在論的探究にとって、決定的な前進であった。 ハイデガーの技術論の重要テクスト3篇を『技術とは何だろうか 三つの講演』として翻訳出版できたことと併せて、現代日本のハイデガー研究に多大な貢献をなしたと言ってよい一年であった。 「世界への愛」という研究テーマが、とりわけハイデガー哲学専門研究に即して深められた。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度前半には、『核時代のテクノロジー論』と題する単著を、現代書館から出版する予定で、目下鋭意準備中である。これは、編訳書『技術とは何だろうか』に収めたハイデガーの三篇の技術論テクストを平易に解説したものであるとともに、3・11以後の日本において哲学の新たな可能性を切り拓く書き下ろし著作である。 2019年度後半には、『ポリスへの愛』を風行社から、『アーレントと赦しの可能性』を明石書店から、出版する予定である。 さらに、2019年度を通じて、アーレント『革命論』と、ニーチェ『ツァラトゥトラはこう言った』の新訳出版の準備を進めていく。いずれも、2020年の公刊をめざしている。
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