「「世界への愛」をめぐる存在論的探究」の最終年度である2019年度は、実り豊かな一年であった。2019年3月11日に刊行した単独編訳書、マルティン・ハイデガー『技術とは何だろうか 三つの講演』(講談社学術文庫)にちなんで、まず、講談社の雑誌『本』4月号に、論考「核時代に救いはありうるか?」を寄稿した。また、ハイデガー技術論の最重要テクスト「技術とは何だろうか」を解説した論考「核時代のテクノロジー論 ハイデガーの技術論講演を読む」を、佐伯啓思監修の雑誌『ひらく②』(エイアンドエフ、2019年11月)に寄稿した。さらに、上記編訳書所収の三講演を入念に解説した単著『核時代のテクノロジー論 ハイデガー『技術とは何だろうか』を読み直す』を、2020年3月31日に現代書館より刊行した。年来のハイデガー技術論研究はこれにて一応の完成を見たことになる。 また、アーレント研究では、論文「誕生、行為、創設――アーレント『革命論』における「始まり」について」を、『思想』第1141号(岩波書店、2019年5月)に掲載した。『革命論』ドイツ語版からの翻訳作業も進捗した。 「ハイデガーからアーレントへ」という研究テーマに関しては、2019年10月に明治大学で行なわれた公開シンポジウム「ことばと政治 いま、哲学は人間をどう問うているのか」にて、提題者の一人として発表し、その提題内容「〈応答して語る存在者〉のゆくえ――アーレントからハイデガーへ」を、明治大学人文科学研究所紀要、第87冊、2020年3月、に掲載した。
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