2017・2018年度は「ドイツにおける青年運動および神学に関するカヴァイエスの見解」についての研究をおこなった。2019年度はこの研究課題の前史ともいうべき、(1)「高等師範学校時代のカヴァイエスの宗教活動」のテーマに取り組み、(2)このテーマと昨年度までの研究課題との関係を明らかにすると共に、(3)彼のレジスタンス活動と宗教思想の関わりについても簡単な考察をおこなった。 (1)彼は、論文「道徳教育とライシテ」(1928)において、「生の生ける存在」である神という「絶対的なものと一致」に、永遠性が見出されると述べている。その永遠性の内実は、「魂の生のリズムと永遠的生のリズムとの調和」にある。また、他の論文では、「行動への衝動」により、行動と行動が連鎖していくような「内的必然性」が己のうちに見出される、と述べている。とするならば、〈魂のリズムと永遠的生のリズムの調和〉とは、行動と行動をつなぐ「内的必然性」を捉えることにある、とひとまず言えよう。 (2)ドイツ青年運動研究を通してカヴァイエスは、己の本質に素朴に割り当てるものとしての「内的資源」という「永遠性」を青年は備えている、と述べていた。この永遠性とは、(1)を踏まえれば、〈行動と行動を必然的に連鎖させることで神のリズムと調和すること〉ということができるだろう。 (3)また、ナチス政権下におけるドイツ福音主義教会の運動の中に、カヴァイエスは永遠性に参与しようとする青年運動の「内的資源」の継続を見ている。それゆえ、カヴァイエスの対ナチス・レジスタンス運動に関して、次のような作業仮説を立てることができる。 「彼の抵抗運動は、青年運動からの断絶でもあると共に、またその内的資源の継承でもあるドイツ福音主義教会の運動を、さらに自分なりに再開しようとしたものである」と。
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