研究期間全体を通じて、アラブ古典音楽のタクスィーム(即興演奏)に関し、マカーム(旋法)の構造と展開について研究を推進した。現地調査は①マレーシア(2018年3月)と②カタール(2018年4月)で行った。 研究成果展として毎年度、多摩美術大学における公開講座を開催した。①「マカームとラーガ2」(2017年12月)、②「マカームとラーガ3」(2018年12月)、③「アラブ・アンダルシアとルネサンス」(2019年12月)。東京音楽大学客員教授小日向英俊氏を講師に迎え、音楽家による実演を伴いながら、アラブ音楽の即興演奏タクスィームとインド音楽のアーラープの比較研究、ルネサンス音楽とアラブ音楽の関係等を討議した。講座全体の記録をDVDとして残し、演奏の一部はYouTubeにも公開した。 2018年3月、トルコのビレン・イシュクタシュ博士企画によりクアラルンプールで開催された「インターナショナル・シェリフ・ム ヒッディン・タルガン・ウード・フェスティバル」に出演し、自作曲とタクスィームを演奏した。トルコ音楽とアラブ音楽の比較研究を行い、タクスィームの多様なプロセスを検討した。また東南アジア諸国におけるウード音楽の状況を調査した。2018年4月、カタールのドーハで行われた「カターラ第2回ウード ・フェスティバル」に出演した。現代の代表的音楽家メフメット・ビットメッツ(トルコ)、ユルダル・トク ジャン(トルコ)、ハイグ・ヤズジアン(アルメニア)に聞き取り調査を実施した。 2019年度は、代表的音楽家のウード ・タクスィームにおけるマカームの構造と展開について、資料調査を中心に研究を進めた。マカームごとに、導入・開始・展開・転調・帰結等の行程に用いられる典型的なテトラコルドの構造と動きを整理した。
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