研究課題/領域番号 |
17K02313
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
高松 良幸 静岡大学, 情報学部, 教授 (40310669)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 松平定信 / 楽翁画帖 / 楽翁法帖 / 集古十種 / 古画類聚 / 谷文晁 / 住吉派 |
研究実績の概要 |
本研究は、松平定信が行った美術作品や文化財に関するさまざまな書画・画像情報の蒐集、管理活動を以下の具体的な4つの事例研究を通じて総合的に把握し、その実態を検証するとともに、かかる活動が定信の実施した各種政策とどのように関連するものであるかを考察するものである。 1.「『楽翁画帖』『楽翁法帖』と同時代の寄合書画帖に関する研究」では、「楽翁法帖」に関する概要ならびに制作経緯等に関する論文を執筆公刊した。また前年度に続き「菅茶山関係資料」(広島県立歴史博物館黄葉夕陽文庫)中の書画帖、書画巻や佐藤一斎蒐集の書画巻「名流清寄」(個人蔵)等、同時代の寄合書画帖等に関する画像資料の調査、整理を行った。 2.「『楽翁画帖』『楽翁法帖』の蒐集活動と『集古十種』収録文化財の調査活動、写実的風景画制作活動等に関する研究」では、谷文晁、白雲、大野文泉ら定信周辺の画人が行った『集古十種』「古画類聚』編纂のための旅程の中で、彼らが並行してどのような写実的風景画等の制作を行ったのかについて、これまでの研究成果を参照し、各画人ごとに年表として整理する作業を前年度に引き続き進めた。 3.「『古画類聚』の編纂方針に関する研究」では、「住吉家粉本」(東京藝術大学)のうち『古画類聚』に共通する特色を有する画像資料の調査を進めるとともに、これを『古画類聚』と比較検討する作業を進めた。また柴野栗山・住吉広行『寺社宝物展閲目録』、屋代弘賢『道の幸』など定信と住吉広行の関係を示す文献資料の検証や、定信の賛がある住吉広行の作品の調査等を実施した。なおその一部について、下記の論考に纏め公表した。 4.「伝谷文晁筆『近世名家肖像』に関する研究」では、「近世名家肖像」(東京国立博物館)の画像による調査研究を進め、その肖像画稿の制作経緯や像主の経歴等についてこれまでの研究成果を参照し、その整理作業を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当年度、1、2、3、4の各項目についてはそれぞれ概ね研究計画に沿った調査研究活動を実施した。特に3については江戸時代中期の住吉派が、幕府御用絵師として画像情報の知識化という活動を実施たことの一環が松平定信の画像情報蒐集等の前提となっている旨を紹介する論文を公表することができた。 一方調査研究活動は、研究代表者の体調不良による入院等のため、計画していた実物の作品や資料の調査を次年度以降に実施せざるを得ない状況となり、画像資料や既存の文献資料の調査を中心とする基礎研究の段階にとどまった。 これらの点を総合的に判断して、「おおむね順調に進展している」とした。
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今後の研究の推進方策 |
令和元年度は最終年度に当たるので、各項目について以下のとおり研究成果を取り纏めていくつもりである。 1については「楽翁画帖」「楽翁法帖」の全体像、個々の作品や作者について検証の詳細化を図り、これらの作品の所蔵者である平野美術館による作品図録の出版計画の中で、その成果を公表していく予定である。また、同時代の他の書画帖・書画巻等については実物調査を順次実施し、その成果を論文等で示していく予定である。 2については谷文晁、白雲、大野文泉らの各種画像情報蒐集の過程についてデータベース化を一層進めていくとともに、重要な関連資料については実物調査を進めていく。 3については、『古画類聚』と「住吉家粉本」の関係性に関する画像資料の比較検討を一層進めていくとともに、この時期の住吉派の位置付けに関する考察を進めていく予定である。 4については、可能であれば「近世名家肖像」等の実物調査を実施するとともに、その成果に関する論考の執筆作業を進めていく予定である。 なお、研究代表者の体調不良、病院における治療は前年度から続いており、場合によっては計画している実物資料調査等を断念せざるを得ない可能性も存在する。その場合は画像情報調査などの代替調査によりできるだけ計画の方針に沿うように研究を進めていきたい。
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