研究課題/領域番号 |
17K02362
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
井戸川 豊 広島大学, 教育学研究科, 教授 (50293022)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 銀泥の剥離 / 銀粉を自動乳鉢で擂る時間 / 銀粉とガラスフリットの混合比 |
研究実績の概要 |
○〔銀紛の粒子の大きさと器面への影響についての基礎調査〕平成30(2018)年度の実施内容については、平成29(2017)年度に行った基礎調査で得た課題である銀泥の器面からの剥離について研究した。平成29年度の基礎調査で、銀粉を自動乳鉢機で擂る時間を短縮することで、剥離を抑えることができると仮定した。剥離がおきた銀泥では銀粉を24時間かけ擂っていたので、今回の調査では、18時間かけて擂った銀粉、12時間で擂った銀粉、6時間で擂った銀粉用意し、それらの銀粉をふのりと混合して銀泥にした液を磁胎に塗布し焼成した。その結果、銀粉を擂る時間を短縮するごとに剥離が少なくなり、12時間かけて擂った銀粉ではほぼ剥離が消えた。このことによって、銀泥の剥離と擂る時間の長さとの因果関係が確認され、擦る時間を短縮することによって、銀泥が器面から剥離することを抑えることができることが確認された。 〇〔銀粉と培溶材となるガラスフリットとの混合割合の特定の調査〕ガラスフリットと銀粉の調合割合については、銀粉:ガラスフリットを主に「10:1」、「10:2」、「10:3」の3つの割合で混合し焼成を試みた結果、「10:1」は少し表面に粗さがみられた。「10:2」ではマット調の雰囲気がみられた。「10:3」では表面に光沢が生じた。今回試みた銀粉とガラスフリットとの調合割合については、質感と視覚の面から、それぞれに特徴がみられたが「10:2」の調合比を今回最も美的効果があると判断した。 〇〔美術館学芸員からの参考意見の聴取〕東京国立近代美術館の学芸員を招へいし、過去の著名な陶芸作家の活動を例に挙げ、創作や表現に関わる活動をレクチャーいただき、現代陶芸における創作性を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初、平成30(2018)年度の研究計画として、主に三つを掲げていた。 第一は、「銀泥としての発色維持研究と焼き物素地に対する銀泥の固着研究」、第二は、「銀粉ならび媒溶材となるガラスフリットとの混合割合の特定を調査」、第三は、「色絵磁器の生産地での実地調査」であった。 しかし、第一、第二についての作業に時間を要し、当初予定していた第三の実地調査は、進んでいない現状である。
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今後の研究の推進方策 |
〇銀泥と金・プラチナ・色絵具顔料との焼成による発色維持研究 銀泥を器面に塗布し、焼成によって固着しコーティングされた銀泥上に金粉とプラチナ粉および色絵具によって描画し、発色維持と色彩変化の基礎資料を作成する。使用する色絵具は、まず20色を目標としそれらの色味変化の幅と質感の維持の焼成温度を特定して美的効果のある発色維持と色彩変化の基礎資料を作成する。 〇陶磁器絵における表現への展開 銀泥の試験体に使う陶磁器素地と研究成果発表の作品用の素地の選定を当該年度の準備作業とする。当初、高火度域から中火度、低火度域まで対応する素地とし、中・低火度域の素地は、一度高火度焼成(1250℃前後)した素地に銀泥を塗布して、もう一度各温度領域で焼き付けるものとする。銀泥の発色を良好にするため、特に焼き上がりの白さと描画のしやすさを重視して、銀泥と金・プラチナ・色絵具顔料との焼成による発色維持に最も適している磁器土を対象とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度は、「銀粉ならび媒溶材となるガラスフリットとの混合割合の特定を調査」と、「銀泥としての発色維持研究と焼き物素地に対する銀泥の固着研究」に時間を要してしまい、当初予定していた色絵具の購入を行わなかったので、予算を執行し切れていない。 次年度は、色絵具とその周辺道具及び原料等を購入すること、そして色絵磁器の生産地での実地調査に予算を充てることを計画している。
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