研究課題/領域番号 |
17K02424
|
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
小川 剛生 慶應義塾大学, 文学部(三田), 教授 (30295117)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 和漢聯句 / 今川義元 / 太原崇孚 / 今川氏真 / 妙心寺 / 百人一首宗祇抄 |
研究実績の概要 |
まず今川氏・上杉氏・武田氏の和漢聯句の興行と作品の蒐集を考察した。とりわけ今川義元と、その軍師と言われる太原崇孚の作品を見出して、その教養を具体的に知ることができた。さらに二人の動きを支えた妙心寺派禅僧の動向を分析し、「戦国大名の文芸と和漢聯句」と題して口頭発表した。これに関連して、歌道師範の飛鳥井家が16世紀には全国の大名・国人・社人などに蹴鞠を伝授していたその活動を、免許状の収集によって跡付け、「「戦国時代の文化伝播」の実態―地方は中央に何を求めたか?」として発表し、当時の文化伝播の一典型として論じた。さらに上杉氏一門の武将であった三浦道寸の和歌事蹟を探索し、自筆にかかる続草庵和歌集が現存することを突き止め、数度にわたりくわしく書誌を調査した。 それから論文としては以下の二本を執筆した。「今川氏と和歌-文学活動に長い伝統と実績を持つ家柄」を執筆し、今川氏真を中心として戦国大名の和歌に関してさまざまな視点から考えた。「室町期の武士と源氏物語」では、中世武士の教養としてあった源氏物語について、その諸相を述べた。 また武家が和歌を学ぶ入門書として室町戦国期には百人一首がクローズアップされたことはよく知られるが、それは地方の大名・国人をしばしば訪問していた連歌師宗祇の力であった。そのことに着目し、宗祇の注釈書である百人一首宗祇抄の伝本研究を行った。論文「百人一首の「発見」―頓阿から宗祇へ」を刊行し、またこれまで注意されなかった新出の古写本を影印本として刊行する準備を進めた。 なおこの研究と関連して、弘前大学に招待された際に「将軍・大名による私家集の蒐集について」と題して、江戸初期の津軽家藩主の和歌に関する講演を行った。同家の和歌活動では、添削や歌学などに依然中世的要素が色濃く残り、その史料の豊富さから逆に中世の実態を窺うことができることを示した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
標題の東国大名の下での和漢聯句について、新しい資格から分析することができ、その成果が上がりつつあることが挙げられる。またそれ以外の領域でも、戦国大名と文化について複数の論文を執筆することができたため。
|
今後の研究の推進方策 |
今後とも、上杉氏・武田氏・今川氏・後北条氏といった東国大名の文事について、人的構成の分析と作品の注釈を柱として研究を進めていくつもりである。
|