研究課題/領域番号 |
17K02490
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
佐野 隆弥 筑波大学, 人文社会系, 教授 (90196296)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | Thomas Dekker / Satiromastix / Ben Jonson / 詩人戦争 / 成人劇団 / 少年劇団 / 諷刺 |
研究実績の概要 |
令和元年度においては、エリザベス朝王朝交替期における宗教・政治関係の研究書、および諷刺文化と演劇興行に関する文献・資料を収集し、あわせてThomas Dekkerの諷刺喜劇に関する研究発表ならびに論文の執筆を行った。 研究発表については、「1601年の少年劇団──Thomas Dekker’s *Satiromastix*を中心に」を第36回エリザベス朝研究会(2019年6月29日、於慶應義塾大学日吉キャンパス)で発表した。 論文については、"Boy Companies in 1601: Thomas Dekker's *Satiromastix* and their Fortunes"を『文藝言語研究』第77巻(筑波大学大学院人文社会科学研究科文芸・言語専攻、2020年3月)、pp. 1-14に掲載した。王朝交替期に生起した、少年劇団の活動再開に密接に関連する詩人戦争という現象を、*Satiromastix*という戯曲の分析を通して検証し、(1)当該時期におけるBen Jonsonと成人劇団(宮内大臣一座)と少年劇団(セント・ポール少年劇団)3者の拮抗関係が、それまで少年劇団と接点のなかったDekkerの少年劇団との関係構築に作用したこと、(2)*Satiromastix*が上演された1601年を境に、活動再開を果たした2つの少年劇団が転機(特に、チャペル・ロイアル少年劇団における諷刺路線の先鋭化)を迎えたこと、を明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の目的は、エリザベス朝王朝交替期において顕著となった諷刺的文化環境が、演劇興行に及ぼした作用を検証することであり、取り分け少年劇団の活動再開という現象が呈示する演劇興行の実態を実証的に明らかにすることである。特に、令和元年度の目的は、Thomas Dekkerの*Satiromastix*の検証を通して、詩人戦争の展開と少年劇団の振る舞いを探ることであった。この件に関し、研究論文を1編執筆し、また研究発表を1件行うことができた。よって、「おおむね順調に進展している」と評価する。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究課題の目的は、エリザベス朝王朝交替期において顕著となった諷刺的文化環境が、演劇興行に及ぼした作用を検証することであり、取り分け少年劇団の活動再開という現象が呈示する演劇興行の実態を実証的に明らかにすることである。令和2年度は、過去3年の成果を踏まえて、作者不詳の大学劇『パルナッソス3部作』を中心に、詩人戦争の実態を考慮に入れながら、諷刺文化の隆盛と演劇興行へのインパクトの解明という本プロジェクトの総仕上げを行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
令和元年度は、当該年度配当直接経費80万円と、前年度繰越金約30万円の一部を執行することで、十分な成果をあげることができたが、令和2年に予定していた複数の出張が新型肺炎の影響で中止になり次年度使用額が発生した。 令和2年度では、繰越金の残額をも活用しながら、研究課題を遂行する。各種資料・研究書の収集、それらの利用による研究論文の執筆および研究発表はもとより、これらの事業に加えて(状況が許せば)ロンドンへの現地調査を行い、研究成果に反映させることを計画している。
|