本研究は文学作品における太平洋表象と、作家や語り手の帰属意識(ホームの感覚)との影響関係を探った。対象とした作品は19世紀から20世紀初頭に至る英語圏小説で、作家の現地での見聞を反映した作品は、探検記や旅行記に依拠した物語よりもリアリスティックな世界を読者に提供した。しかしながら、歴史的に俯瞰する時、その系譜はファンタジーからリアリズムといった直線的なものではなく、虚構と現実が混ざり合う複雑な様相を呈する。こうした状況を個別化されたホームの感覚を通して検証し、後期ヴィクトリア朝作家の太平洋作品に通底する共通性と差異とを検証した。
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