研究課題
本研究では、博物誌・百科事典の本文を比較・分析することにより、動物・植物・鉱物等についての博物学的記述が、古代ギリシア・ローマから、イングランドを初め、フランスやドイツ等のヨーロッパ中世に、どのように受け継がれていったかを分析する。さらに、ヨーロッパ中世の博物学的知識が、どのように中世イスラーム世界からの影響を受けたか、また、どのように近世ヨーロッパへとつながっていったかをあわせて考察する。そして、それらを通し、時代や地域を限定した局地的な知のあり方ではなく、古代から中近世ヨーロッパという時代的な広がりや、ヨーロッパと中東という地域的広がりをカバーし、当時の知識のあり方を総合的に浮かびあがらせることを目的とする。研究分担は引き続き、西洋古代及び中世を大沼、西洋近世を黒川、イスラーム中世を山中が担当し、それぞれの担当する地域と時代とにおける代表的な資料を数例取り上げて分析した。本年は、プロジェクトの最終年度として、昨年度より持ち越しとなっていた、三人全員が参加した論文集の刊行に努め、修正を重ねて、年度末に刊行することができた。これは、元をたどれば、2020年度に大沼が企画し山中が参加した、ユダヤ、イスラーム、ヨーロッパの巨人像表象についてのシンポジウムに端を発している。それを発展させ、発表者を増やして黒川もコメンテーターとして参加し、2021年に行ったシンポジウムのproceedingsとして、今回プロジェクトの締めくくりと位置付け3名共に寄稿した。ここでは3名それぞれが、百科事典、旅行記、驚異譚などをとりあげ、古代から近世に渡るヨーロッパおよびアラブ・ペルシア世界の巨人像について分析した。それ以外に、個々でも論文の刊行や国際学会発表を行い、研究成果の発信及び次なる研究への発展に努めた。また、一般書や新聞などを通じ、学術界に限らない成果の還元も行った。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (7件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件) 図書 (1件)
『「巨人」の場(トポス) ―古代オリエント・ユダヤ・イスラーム・ヨーロッパ文化圏における巨人表象の変遷』、勝又悦子編(同志社大学一神教学際研究センター)
巻: - ページ: 59-79
巻: - ページ: 165-188
『太成学院大学紀要』
巻: 25 ページ: 55-65
巻: - ページ: 115-138
『旅するナラティヴ―西洋中世をめぐる移動の諸相』、大沼由布・徳永聡子編(知泉書館)
巻: - ページ: 5-21
巻: - ページ: v-viii
Atsushi Egawa, Marc Smith, Megumi Tanabe, Hanno Wijsman (eds.) Horizons medievaux d’Orient et d’Occident: Regards croises entre France et Japon
巻: - ページ: 169-195