研究課題/領域番号 |
17K02564
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研究機関 | 武蔵野美術大学 |
研究代表者 |
相原 優子 武蔵野美術大学, 造形学部, 教授 (30409396)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ユダヤ系アメリカ文学 |
研究実績の概要 |
2019年度は、2本論文と書評一つを執筆し、研究発表1つを行った。これらは、すべて研究課題のテーマであるユダヤ系作家と「身体的可傷性」と関連するものである。
まず、この度、長年の研究テーマの一人ソール・ベローとグレイス・ペイリーの作品を比較して論じる機会を頂いた。特に「家」のモチーフに焦点を当てることによって、長年の関心であるイスラエル問題にも触れることができた。この考察を経て、「ソール・ベローとグレイス・ペイリー:家を問う女たち」(『ソール・ベローともう一人の作家』日本ソール・ベロー協会編著、彩流社、2019年、pp.237-258)というタイトルの論文を執筆した。また、ソール・ベローの名前を冠した賞の受賞者でもあり、ベローより1世代若い作家として最も著名なのは、フィリップ・ロスであろう。彼の作品はほかの作家と比べて映画化されることが多いことから、最近特に研究が盛んなアダプテーション論の観点から、ロス作品にみられる「身体性」を中心に彼の『ヒューマン・ステイン』という作品を論じた。「ミスキャストの謎を追って」『アメリカ文学と映画』、杉野健太郎責任編集、三修社、2019年、pp258-278n)というタイトルで論文にまとめた。依頼されて執筆した書評としては、杉澤伶維子著『フィリップ・ロスとアメリカ:後期作品論』(『アメリカ文学研究』アメリカ文学会、pp.64-70)である。そして、研究発表としては日本アメリカ文学会大会のワークショップ「いま、ソール・ベローを読む面白さとは:もう一人の作家と読んでみる」(10月6日『アメリカ文学会全国大会』、東北学院大学)に、発表者の一人として参加した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2019年度は論文の執筆、研究発表などの機会を得て、かなり研究を進めることができた。ただし、学務や介護が思いのほか時間と労力を要するため、まだこの研究課題を考察するうえで論じる予定となっている作品、ソール・ベローの『ラヴェルスタイン(Ravelstein)』とシンシア・オジックの作品を論じるには至っていない。これらの作品については、これから考察する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
今後の予定としては、本研究課題で考察する予定となっているソール・ベロー『ラヴェルスタイン(Ravelstein)』とシンシア・オジック『プッターメッサー・ペーパーズ(Puttermesser Papers)』の考察を行い、何らかの形(論文、研究発表など)で発表したいと考えている。また、ベローに関しては彼の後期の作品More Die of Heartbreakで論文を一つ執筆することになっており、この論文がいい形で本研究課題とつながり、研究を進めるうえで効果的なプロジェクトになってくれればと願っている。また、ベローの同時代作家であるBernard Malamudとユダヤ系アメリカ文学全体についての記事を執筆する予定となっている。これらの仕事も本研究課題を進めるうえで有益であればと願っている。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由としては、介護の負担など家庭における環境の変化、また学務の多忙さ、授業の準備などから十分な研究時間を捻出できなかったことが挙げられる。
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