研究課題/領域番号 |
17K02564
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研究機関 | 武蔵野美術大学 |
研究代表者 |
相原 優子 武蔵野美術大学, 造形学部, 教授 (30409396)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ユダヤ系アメリカ人作家 / ソール・ベロー |
研究実績の概要 |
代表的なユダヤ系アメリカ人作家ソール・べローをはじめとする、現代ユダヤ系アメリカ人文学に於ける「可傷性」のモチーフを考察している。現在は、ソール・ベロー後期の長編小説であるMore Die of Heartbreak (1987)の分析を進めており、論文を執筆している。この作品はベローの後期の作品の中で地味な喜劇的な作品として充分考察されてこなかった。失敗作とみなされていたこの作品の再評価を試みたいと思う。今後、彼の最晩年の作品Ravelstein(『ラヴェルスタイン』)やシンシア・オジックやグレイス・ペイリーなどの女性作家たちの作品の考察もいまた充分とは言えないため、今後進めていきたいと思う。特にオジックのPuttermesser Papersの考察をずっと進めたいと思っていながら、未だ充分時間をかけられずにおり、この作品の考察を行いたいと思う。
2020年度は、コロナ禍ということもあり、オンライン授業の準備に多大な労力と時間がとられてしまい、研究時間は削られたなか、ユダヤ系アメリカ文学研究の一環として、竹内理矢、山本洋平編著による共著『深まりゆくアメリカ文学:源流と展開』(世界の文学をひらく3)、ミネルヴァ書房(2021年4月1日出版)のために、「ユダヤ系アメリカ文学:定義を巡る冒険」(32-33)と「バーナード・マラマッド」(136-137)の二つの記事を執筆した。日本アメリカ文学会の会誌『アメリカ文学研究』(第57号)の短評で共著『アメリカ文学と映画』のために書いた論文「ミスキャストの謎を追って」が、特に印象的な論文として取り上げられた。(128-129)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ソール・ベローの作品More Die of Heartbreak の分析と論文執筆に思いのほか時間を費やしてしまった。その甲斐があり、ベロー文学の分析を随分進めることが出来たと思う。一方、主要な女性ユダヤ系アメリカ人作家シンシア・オジックの長編小説Puttermesser Papersの分析を充分に行っていない。また、ソール・ベロー最後の作品となる『ラヴェルスタイン』の分析も進めたいと考えているが、まだ、実施できていない。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、ソール・ベローを中心としたユダヤ系アメリカ人作家研究を継続していきたいと考えている。現在執筆中のMore Die of Heartbreak (1987)に関する論文を仕上げ、何らかのかたちで発表できる方法を模索したいと思う。まだ、充分分析が進められていない女性作家たち特にシンシア・オジックの長編小説Puttermesser Papersやグレイス・ペイリーの短編小説の分析を開始したいと考えている。また、べロー作品で描かれる登場人物たちの人間関係にも焦点を当てて、考察したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用が生じた理由としては、2020年は主に、コロナ対応として、急遽慣れないオンラインに授業形態が切り替わり、毎日のオンライン授業の準備と実施に多大な労力と時間が割かれてしまったことが挙げられる。併せて、日々の家事や介護などもあり、研究時間が大幅に削られてしまった。コロナ禍で移動が制限されるなか、研究や学会出席のための出張も、学会の延期や中止などで実施できなかった。昨年度使用出来なかった分も含め、研究のための資料や研究に必要な道具などの購入に宛て、効果的に使用したいと思う。
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