研究課題/領域番号 |
17K02625
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
坂内 徳明 一橋大学, その他部局等, 名誉教授 (00126369)
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研究分担者 |
鳥山 祐介 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (40466694)
金澤 美知子 日本大学, 芸術学部, 研究員 (60143343)
佐藤 千登勢 法政大学, 国際文化学部, 教授 (90298109)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ウサーヂバ / 貴族屋敷 / 感傷小説 / 領主 / 貴族 / 庭園 / 帝都郊外 / エカテリンゴフ園遊会 |
研究実績の概要 |
研究の当該年度の第三年度にあたる2019年度においては、当初の予定は、8月の現地ロシアにおける貴族屋敷跡の調査、ならびに2018年度に刊行する予定であった中間報告書の準備という二点にありました。これは、当初の計画どおり実施することができ、本研究の総括にも大きな成果をもたらすことは間違いないと思われます。 具体的に記すならば、前者については、2019年8月半ばに、ペテルブルク近郊のイズヴァラ他の複数の貴族屋敷(ウサーヂバ)跡を子細に見学・調査することができましたが、その際には、研究協力者のN.V.ニコラエフ氏の全面的な協力を得たことはきわめて有効でありました。そして、ロシアの中でも、本国での調査・研究が比較的少ないペテルブルク近郊・ロシア北西部のウサーヂバの状況ならびに現状を実際に調査できたことは、ウサーヂバ研究全体にも大きな意義があるものと考えます。 また、後者の報告書の刊行においては、代表者ならびに分担者、また、協力者を含む全体で5名の著者による6本の論考が収録され、124頁からなる論文集としてまとめることができたのは大きな成果と考えられます。内容としては、概観・現状分析から見たウサーヂバ研究史、都市・帝都郊外の園遊地の誕生と初期の歴史、18世紀後半のロシア文学におけるウサーヂバ像と翻訳・紹介、貴族ウサーヂバのアーカイブ資料紹介、そして文学作品にみる実際の庭園・ウサーヂバとの比較対象、といった具合にきわめて多種多様な側面からのウサーヂバ研究へのアプローチがなされており、同種の論文集は日本のみならず、本国ロシアでもほとんど刊行されていないばかりか、こうした「切り口」そのものが今後のウサーヂバ研究にも有効であると考えられます。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
全体で4か年にわたる本研究の中間報告書は2019年度に刊行するつもりでしたが、諸般の事情から2020年度としました。その意味で予定変更はあるとはいえ、全体として見れば、研究は代表者による現地調査ならびに本国の研究状況の把握、また、分担者による18世紀文学作品とウサーヂバとの関連性をめぐる紹介・調査と考察が当初の予定通り行われている点で、進捗状況に大きな遅れはなく、順調に進んでいると考えられます。
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今後の研究の推進方策 |
次年度の2020年度が本研究の最終年度となることから、2019度の中間報告書に続き、最終年度報告書の刊行へと展開し、着実に繋ぐことを計画しています。ただし、問題群全体の広がりから見て、最終的な総括・集約としてでなく、むしろ問題提起的な形とした方が良いと考えており、この点についてはさらに分担者・協力者とも十分議論を重ね、もっとも実現可能で、効果的な形で発現したいと思います。また、問題提起の面とあわせて、可能な範囲において、研究書誌作成、ならびに研究上の重要コンセプト(キーワード)の確認作業も行う計画です。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度は、当初、分担者の国外旅費使用が計画されていましたが、これが実施できませんでした。その分は2020年度に使用する計画です。また、2020年度は、本研究の最終年度にあたることから、2019年度の中間報告書に続き、さらに報告書を作成する予定です。2020年度予算と合わせて、その使用金額を分担者ならびに協力者の間でどのような配分とするかを現在、計画中です。
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備考 |
印刷物の形で、代表者・分担者ならびに協力者・全5名の論文6本を収録した報告書『近代ロシア文学現出の舞台-ロシア文学史における貴族屋敷(ウサーヂバ)の意義-』(A4版、124頁)を刊行しました。ただし、印刷経費は自己負担としました。
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