• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2021 年度 実施状況報告書

中世室町語を源流とする長崎方言の文法的形式の成立と意味的変遷過程に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 17K02781
研究機関長崎大学

研究代表者

前田 桂子  長崎大学, 教育学部, 教授 (90259630)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2023-03-31
キーワード長崎方言 / 室町語 / 近世語 / 文法 / 方言の歴史
研究実績の概要

本研究のテーマは、室町時代に源流を持つ長崎方言の文法に関する研究である。2020年までに、終助詞バイ、タイや接続助詞ンバ、接続詞バッテンなどの特徴的な現代長崎方言を取り上げ、日葡辞書や近世の方言書の記述から、その成立過程を考察した。
2021年度は、近世の長崎方言を写した新たな資料を発掘した。江戸時代に長崎出島商館長ヘンドリック・ドゥーフが作成した『ドゥーフ・ハルマ』初稿の自筆本とされる資料である。本書は、日本人オランダ通詞とともに編纂したことから、多くの長崎方言が含まれている。その中でも辞書の見出し語のうちA項目に限定して長崎方言的特徴を持つ語を取り上げ、語彙、音韻、文法の各方面から考察し、資料的性格を位置づけた。その際、日葡辞書その他近世の方言書の記述と比較し、出島の和蘭通詞の言語生活についても推察した。また、同じく江戸時代に長崎に来たエスパニヤ人アビラ・ヒロンの著作を入手し、ローマ字綴りから音韻・語彙に関する予備調査を行った。以上の取組によって、近世の方言資料の充実と今後の研究の環境整備につながった。
前年度までにまとめた論文に関わる言語事象においても、従来指摘されていない傾向が現代の方言に見られたので、そのことについて可能な範囲で方言調査を行った。しかし、対面での調査が難しい期間が長かったので、この点はまだ十分に明らかにできていない。調査の方法や質問事項も含め、今後、検討を重ねる必要があるが、今後の研究に繋がるテーマが見つかった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

当初の計画より遅れ気味である。コロナ禍で古典籍資料の現地調査や対面での方言調査に制限がかかったことで、調査が進まなかった。2020年度と2021年度は、現地に行かなくても可能な文献調査に少しずつシフトしたが、十分な研究ができなかったため1年間延長した。2022年度は残った調査を済ませ、本研究をまとめたい。

今後の研究の推進方策

2022年度は各言語事象の考察に不足していた追加のデータを取り、論の補強をするとともに、本研究を報告書にまとめたい。また、本研究で明らかになった近世の長崎方言と周辺の方言分布の違いについて整理し、今後の研究の足がかりとしたい。

次年度使用額が生じた理由

コロナ感染症の影響で、方言調査など、話者と対面で行う調査ができず、当初の研究計画が遅延した。そのため、期間の延長を行い、研究費を次年度に持ち越すこととなった。
令和4年度は、これまで行った文献調査と併せて、方言調査を行いたいと考えているが、状況が許さない場合には文献で補い、研究全体報告書の形でまとめたい。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2022 2021

すべて 雑誌論文 (2件) 学会発表 (1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] 『ドゥーフ・ハルマ』初稿の初稿および『和蘭字彙』のF項目の対照翻刻2022

    • 著者名/発表者名
      トート・ルディ 前田桂子 原田走一郎
    • 雑誌名

      多文化社会研究

      巻: 8 ページ: 351-397

  • [雑誌論文] 長崎方言資料としての『ドゥーフ・ハルマ』初稿本―A項目を中心に―2021

    • 著者名/発表者名
      前田桂子
    • 雑誌名

      国語と教育

      巻: 46 ページ: 30-46

  • [学会発表] 『ドゥーフ・ハルマ』初稿本A項目に見る長崎方言2021

    • 著者名/発表者名
      前田桂子
    • 学会等名
      筑紫日本語研究会
  • [図書] 今と昔の長崎に遊ぶ2021

    • 著者名/発表者名
      増﨑 英明、長崎大学地域文化研究会
    • 総ページ数
      330
    • 出版者
      九州大学出版会
    • ISBN
      9784798503103

URL: 

公開日: 2022-12-28  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi