研究課題/領域番号 |
17K02952
|
研究機関 | 京都外国語大学 |
研究代表者 |
堂浦 律子 京都外国語大学, 外国語学部, 非常勤講師 (40623864)
|
研究分担者 |
神谷 健一 大阪工業大学, 知的財産学部, 准教授 (50388352)
井上 昭彦 京都外国語大学, 外国語学部, 非常勤講師 (60623866)
川口 陽子 神戸大学, 大学教育推進機構, 非常勤講師 (50623170)
黒田 恵梨子 京都外国語大学, 外国語学部, 非常勤講師 (70623859)
有田 豊 立命館大学, 言語教育センター, 嘱託講師 (30771943)
三浦 由香利 神戸市外国語大学, 外国学研究所, 非常勤講師 (10621550)
山本 有希 富山高等専門学校, その他部局等, 准教授 (10300568)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 教材作成 / 初習外国語 |
研究実績の概要 |
30年度は、2つのモバイル用学習アプリ「動詞活用学習アプリ」と「単語例文学習アプリ」を3言語において完成して公開し、学会での研究発表も行った。 これらの「学習アプリ」は、過去に教員支援を目的として開発したツールを応用し、大学生や高等専門学校生の授業外学習はもとより、幅広い層の学習者を対象とする生涯学習にも役立つ自律学習支援教材として開発している。前年度から引き続き、試作アプリを授業で使用したりあるいは学生に配布して自習用にも使えるようにして実践を継続した。またアンケートによる学習効果の検証と、利用者の感想や意見の反映を繰り返して改良と調整を進めた末、両アプリの完成に至った。アンケート結果によって、当アプリのようにオフラインで使用できる、即ち通信費がかからずネット環境に影響を受けない日本人学習者向けアプリは、イタリア語とロシア語においてはほぼ皆無、フランス語でも非常に数が少ないことが実証されている。 並行して、利用者のさらなる利便性を図るために、3言語ともサンプルデータおよび詳細な操作マニュアルを整備、新たにウェブ上でそれぞれの言語において別々に「学習ページ」というサイトを設け、アプリと共に無料公開した。この「ページ」は、端末別にiOS用およびFileMaker所有者用、Windows用ランタイム版、MacOS用ランタイム版に分けて見やすく整理され、前年度に比べて使いやすさが大幅に向上したと考えている。データは、そのまま学習に使えるよう各言語の担当研究者が吟味したスタンダードで質の高い内容を掲載しているが、アプリを利用する授業担当者やあるいは学習者自身がカスタマイズすることも可能である。 研究成果の発表については、各言語の研究者がそれぞれ学会や研究会で口頭発表を行ったのに加えて、30年度の研究の総括として、3月に、あるシンポジウムの共催団体として3言語共同の発表を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
各言語としても全体としても、おおむね計画通りといえる。 29年度の「実施状況報告書」の「今後の研究の推進方策」に記載した事項、即ち「『動詞活用学習アプリ(旧名称『動詞変化形提示アプリ』)』と『単語例文学習アプリ』を3言語において完成して公開する」という目標が計画通り達成できた。また、「共催団体として参加するシンポジウムで、それまでの研究を総括する形で報告を行う」というのも実現できた。各言語独自の活動としても、学会あるいは研究会でそれぞれ発表を行っている。ただ、この両アプリと、先に挙げたサイト「学習ページ」は年度末近くになって完成を見たばかりである。今後、広く周知させるための機会を得て、紹介および実践報告を行う必要があるだろう。あわせて、使用方法についての研究を深めて、幅広い世代の多くの学習者にとってより使いやすく学習効果の高い使用方法例を提示することも重要である。 今年度は、イタリア語とロシア語で新しいツールまたはアプリの開発に着手している。イタリア語は「文変形提示ツール」の完成を目指している。これは、教員支援ツールとして開発自体はすでに完了しているが、使用方法の研究がまだ十分ではない。データ整備と実践のための準備を行っているところである。ロシア語は、名詞や代名詞などの6種類ある語形変化形を学習するための「格変化形学習ツール」、形容詞や所有代名詞などの性・数変化を学ぶための「形容詞変化形学習ツール」を開発中であり、研究会での発表も予定している。一方フランス語は、「四択問題ツール」(開発済み)のデータを整備して無料公開し、年度後半には作成したデータを「単語例文学習アプリ」や「フラッシュ型例文・対訳提示ツール」(開発済み)と連動させ授業で実践を行って、その結果を論文と学会で発表するという計画の実施に取り組んでいる。
|
今後の研究の推進方策 |
31年度(2019年度)は、「開発途上のツールの完成」と「研究全体の集大成」に向けて活動を進める。イタリア語の「文変形提示ツール」では、近過去や補語人称代名詞のなどいくつかの文法項目の習得においてツールが有効かどうかを検証したうえでデータ整備を進め、公開を実現させる。ロシア語の「格変化形学習ツール」は、文章中の空欄に当てはまる適切な変化形を答える形式で、より実用的なトレーニングができることが特徴である。「形容詞変化形学習ツール」は、画面の表示/非表示を切り替えることで,効率的な学習ができることを特徴とする。特徴の異なる2つのツールの研究を推し進め、「ロシア語教育研究会」主催の研究発表会で成果を発表する予定である。フランス語が取り掛かっている「四択問題ツール」のデータ整備は、対訳も備えて問題数500以上を目標とする。さらに、年度の研究の集大成として、2月のシンポジウムで口頭発表を行うことが決定している。論文については、フランス語が単独で執筆を計画している他に、30年度のシンポジウムでの口頭発表を論考の形に整え、資料と共にウェブ上で公開する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
開発者にとっては、プログラム開発環境を整えるため、各種ソフトの最新ヴァージョンが不可欠である。データ整備および教育実践を担当する各言語の研究者は、アプリやツールのコンテンツを作成するために、まずはDVDなどの視覚教材を含む既存の教材と参考書籍を購入して研究を深める必要がある。開発したアプリの機能と使用感を実際に確認するために検証用のモバイル端末が欠かせないが、学習者の多くが所持しているのと同じヴァージョンかそれに近い端末が必要なので、新たに購入する場合が生じる。加えて、引き続き授業でツールを実践使用したり、学会や研究会での発表もしくは各種勉強会での紹介活動の環境を向上させるため、新たにモバイル機器やパソコン、ソフト、関連機器と付属品などの購入を予定している研究者がいる。また、データの内容チェックをネイティブ講師に依頼するための謝金などの人件費、研究発表のための旅費や交通費が見込まれる。さらに、2月には共催団体としてシンポジウムに参加することが決定しており、それに関連する支出が発生する可能性がある。
|