研究課題/領域番号 |
17K03158
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
中村 武司 弘前大学, 人文社会科学部, 准教授 (70533470)
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研究分担者 |
辻本 諭 岐阜大学, 教育学部, 准教授 (50706934)
薩摩 真介 広島大学, 総合科学研究科, 准教授 (70711125)
石橋 悠人 中央大学, 文学部, 准教授 (90724196)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 西洋史 / イギリス / 財政軍事国家 / 財政海軍国家 |
研究実績の概要 |
研究の第1年次にあたる2017年度は、検討課題①「海軍と国家形成・国民形成との関係」ならびに②「財政海軍国家における中央と地域・利害との関係」にかんして、重点的に研究調査を実施した。とくに研究代表者である中村は、イギリスの英国図書館(the British Library)等にて史資料の収集・調査し、検討課題①の解明につとめたほか、各分担者も、担当課題の考察にむけて国内外で史料の収集と分析作業を進めた。 2017年度は9月と3月に定例の研究会を実施した。まず9月の研究会では、研究代表者である中村が、「財政軍事国家論の現在」という報告を行い、J・ブルーワの財政軍事国家論について批判的な検討をくわえると同時に、近年の研究の展開とその問題点を成立することで、財政軍事国家論がもつ有効性や可能性、問題点について、研究代表者、研究分担者のあいだで理解の共有をはかった。また3月の研究会では、研究分担者である辻本が「財政軍事国家論を再検討する──近世イギリス軍事史の立場から」という報告を行い、M・ブラディックの議論を手がかりとして、近世国家の見直しを試みただけでなく、近年のイギリス軍事史研究のさまざまな動向を紹介することで、財政軍事国家論もしくは財政海軍国家論における軍事面の考察を深めるうえで、重要な知見を提供した。 また検討課題①をめぐる研究成果のひとつとして、研究代表者である中村は、アメリカ独立戦争期(1775~1783年)におけるイギリス最大の都市選挙区ウェストミンスタを対象として、海軍の文化史的考察を試みた論文「1782年のウェストミンスタ補欠選挙」を執筆したほか、大阪大学歴史教育研究会においても、財政軍事国家論の批判的再検討をめぐる報告を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の第1年次である2017年度は、本研究の各種課題をめぐって研究代表者・分担者がそれぞれ作業を進めるだけでなく、財政軍事国家論の射程と限界、財政海軍国家論の展開と問題点、さらには海軍史や軍事史における研究動向について、研究グループのあいだで理解を共有することが、今後研究を進めるうえで不可欠の前提条件となる。その意味では、本年度は、まず2017年9月と2018年3月に実施した定例研究会をつうじて、今後の作業に向けて研究代表者・分担者のあいだで理解の共有が達成されただけでなく、本研究の課題解明にむけて作業が進捗し、研究報告や論文の公表を行うことができたとの理由から、研究計画どおりに順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
研究の第2年次にあたる2018年度は、検討課題①と②について、海外での史料の調査と収集のための作業を進めるほか、検討課題③「財政海軍国家による学知・制度形成と国際公共財」についても、並行して考察につとめる予定である。 2018年度も、2回の定例研究会の開催を予定している。まず6月に予定している研究会では、研究分担者の薩摩が検討課題①について報告するほか、2019年3月に予定している研究会では、同じく研究分担者の石橋が、検討課題③について報告を行う。これらの定例研究会以外にも、2018年6月には、本科研との共催により、イギリス史研究会にて、研究代表者の中村が、検討課題①をめぐる研究成果のひとつとして、「長い18世紀イギリスにおける海軍・議会・文化(仮)」と題する報告を行うだけでなく、研究分担者の薩摩がコメンテイタをつとめる予定である。それ以外にも、本研究の進展により得られた成果は、学会・研究会での報告や論文を通じて、積極的に公表につとめることとしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究の実施にあたり購入予定であった外国語文献の納品の遅れや価格変更などの理由により、次年度使用額が発生した。発生した使用額は、2018年度の図書購入のために充当する予定である。
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