19世紀のロシア帝国における民族誌学によるフィールドワーク調査の概要について、ロシア地理学会・民族誌学部会およびロシア考古学会などによる文献史料を中心に調査し、とくに「セクト」と呼ばれた非公認の非伝統的宗派、「異教」と呼ばれたキリスト教以前の土着信仰に関する言説を調査・分析した結果、帝国政府の多宗派公認体制とは別の次元、つまりヨーロッパの知的共同体としてのアカデミズムの枠内で、帝国住民の非公認の信仰状態が文献およびフィールドワーク調査によって言語化されていたことが明らかになり、この学問共同体が帝国の宗教文化の多元性を統合する機能を果たしていた可能性があることが判明した。
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