研究課題/領域番号 |
17K03300
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研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
津村 文彦 名城大学, 外国語学部, 教授 (40363882)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 東南アジア / タイ / バラモン教 / 仏教 / イレズミ |
研究実績の概要 |
平成29年度は、地域間・民族間の流通に焦点を当てて、東南アジア各地にてフィールド調査を実施した。 5月中旬には東北タイ・コーンケン県にて呪的イレズミ(サックヤン)の彫師でもあるバラモン僧(リシ)のワイクルー儀礼の参与観察を行い、サックヤンにおける仏教とバラモン教の混在の有り様についてデータを収集し、ワイクルー儀礼で頻繁に起こるコーンクンと呼ばれる憑依状態について観察と聞き取りを行い、動画撮影なども実施した。 8月から9月にかけては、北タイ・チェンマイ県および東北タイ・コーンケン県の各地にて、彫り師兼バラモン僧を複数訪問し、彼らのサックヤン実践、バラモン教と仏教との関係、コーンクンなどの憑依儀礼についてデータを収集した。特に北タイの呪術的伝統のなかに、シャン(タイヤイ)の伝統が色濃く見られる点が確認できた。またバンコク市では、サックヤンに関連した呪術(サイヤサート)に用いられる道具のマーケットの状況を調査した。 2月初旬には北ラオス・ルアンパバーン県・ボーケーオ県などを訪れ、サックヤンの実践状況について広域調査を行った。観光客が多く外国の文化とも接する機会の多いルアンパバーンから、メコン川を挟んでタイ・チェンコーンと接するフアイサーイまで移動しながら、仏教寺院を中心にサックヤンについて情報を収集したが、現代ラオスではタイと比べてイレズミ実践が極めて低調であった。国や地域を越えたサックヤンの伝承については、さらなる調査が必要である。 これらのフィールドワークで、北タイ、東北タイ、ラオスの呪的イレズミの概況を確認することができた。北タイではミャンマーのシャンの伝統が、東北タイではクメールの伝統が極めて強く入り混じっている一方で、シャンではシャン中心、クメールではクメール中心のイレズミ実践が行われているという対照性が見られるようで、この点をさらに深める必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本プロジェクト全体の1年目であるため、各地で概況を理解するためのフィールド調査を実施したが、特に北タイのチェンマイ周辺、東北タイのコーンケン周辺において、今後も継続してインタビュー調査などが実施できるようなインフォーマントを得ることができた。また二度の国際学会での発表により、研究ネットワークもさらに広げることができたのは大きな収穫といえる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度に得ることのできた北タイ・チェンマイ県や東北タイ・コーンケーン県のサックヤン彫り師の人脈を活かすことで、彼らの実践と知識の継承をめぐる情報をより深く集めることができるだろう。また今年度は東北タイとの比較の観点で、北タイと北ラオスしか見ることができなかったが、次年度はミャンマー・シャン州、カンボジア・シエムリアップ県、ラオス・ヴィエンチャンなどでのフィールド調査を行うことで、広範囲での比較データを収集したい。
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