研究課題/領域番号 |
17K03303
|
研究機関 | 大阪樟蔭女子大学 |
研究代表者 |
濱田 信吾 大阪樟蔭女子大学, 学芸学部, 准教授 (00734518)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | テロワール / メロワール / 北海道 / 食文化 / 味 / ニシン |
研究実績の概要 |
平成30年度は、実地調査の実施による民族学的資料の収集、そして資料整理と進行しながら研究経過の報告を行うことを目標とした。具体的には、(1)北海道での実地調査を通じた現地での文献収集、聞き取り調査、そして沿岸漁業に関連する参与観察、(2)テロワール・メロワールに関する研究会の企画、そして(3)研究経過の口頭および研究ノートの報告を目標とした。 その中で、特に(1)の国内外の文献と資料の収集・整理と(3)の研究紹介・発表を行った。(1)については、8月、9月、2月に3回にわたり現地訪問し、実地調査を行うことができた。よいち水産博物館や現地関係者の協力もあり、聞き取り調査と参与観察を進めることができた。環境変化に関する民族学的資料の収集は、環境変化の認識に世代差が存在し、継続して来年度行う必要がある。(2)は、国内外の文献収集は進んだものの、その論点整理と研究会企画が遅れたため、次年度に持ち越すこととなった。(3)は、食産業関係者向けの招待講義を2回行ったほか、京都大学「食とクラフト研究会」に参加するなどし、ポスト工業化社会における消費文化で重要とされるクラフトに関する議論に、本研究テーマである産地の味の構築の観点から参加し、文献紹介も含め分野横断で議論と理解を深めることができた。 一方、魚食文化に関する共著を英文出版した。その中で、調査地に関連するもの、そして本課題に関連する箇所(テロワール)を執筆した。また、一般者向けの雑誌に、本課題を主題として小論を2度寄稿し、最終年度の論文執筆に向け準備を行うことができた
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
(1)に関しては、3度の実地調査を行うことができたが、本務校の授業がない夏期と冬期に限定され、予定していたほどの日数と回数の実地調査が行えなかった。特に、研究テーマとした主要魚種(ニシン)の漁期に現地訪問を行うことができなかった。そして、(2)に関しては、テロワール研究に携わる海外研究者との予定が折り合わず、次年度に持ち越すこととなった(下部参照)。(1)と(2)に関連してやや遅れている点は、収集した資料の分析である。テロワール論の先行研究を援用し、本研究ではメロワール構築につながる評価要素の分類を行うが、実地調査に行く回数と時期が当初の予定より遅れたため、その作業がやや遅れている。
|
今後の研究の推進方策 |
(1)に関しては、夏期に2度、秋期に1度、そして2月に現地訪問する時間を確保し、民族学的資料の収集を継続する。これまでに収集した資料の分類の分析の作業は夏期までに終え、秋期以降は、それまでで欠如していると確認された資料の追加収集と目指す。特に、生産や流通における食味に関わる技術の変化と革新、そして気候変動を含む生産環境の変化に対する現地の行為主体者の認識を検証するための資料収集を行う。 (2)の研究会・シンポジウムの実施は、本年度終期(2・3月)の実施で企画を進める。 (3)は、6月にアメリカで開催されるAssociation for the Study of Food and Society学会での口頭発表、8月に韓国で開催される東アジア科学史会議での口頭発表が決定している。また、英文査読論文の執筆を進めながら、11月にアメリカで開催されるアメリカ人類学会に参加の際に、本研究に関する単著出版に向けて出版社との交渉を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成30年度には平成29年度より、729,546円の予算が繰り越されている。これは29年度からの繰越に加え、30年度に予定していた現地訪問と調査期間の短縮によりその旅費に当てていた予算が繰越となったためと、29年度に企画していた研究会が延期となったためである。 次年度使用額の使用計画:次年度は、現地調査、国際学会への参加、論文執筆、著書出版準備、そして国内向けの研究会またはシンポジウムを開催するのに使用する。また、実地調査で収集した資料の効率的かつタイムリーな整理を行うため、必要な消耗品と備品の確保、そして助手を雇用し、円滑な研究実施と年度内の成果物の完成を目指す。 31年度(令和0年度)は、研究経過と結果の発表のため、3度の国際学会への参加を予定している。また、英語論文の執筆にかかる校閲、研究成果発信に向けた英文著書企画書の校閲などに研究費を利用する。そして、3月に「場所の味」をテーマにした研究会またはシンポジウムを企画する。この企画では、テロワール、メロワールにとどまらず、日本の風土論や風土という概念も用いながら、日本から学際的かつ国際的な食学研究の発信を行いたい。
|