本研究は、戦前における日本憲法学説史の全体像を明らかにするための基礎作業として、「立憲学派」および「正統学派」の特徴を両者の比較を通して浮き彫りにしようとするものである。そこで、穂積八束・上杉慎吉・美濃部達吉らの議論を検討したところ、彼らの「立憲主義論」とはそれぞれが理想とする「政体論」にほかならないこと、そして、かかる「政体論」が「国体論」によって基礎づけられていることが明らかとなった。このことから、「立憲学派」と「正統学派」のいずれにおいても、実定憲法を超えた議論を行う「場」として「国体論」が機能していたのではないかというのが、本研究が得た仮説である。
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