研究課題/領域番号 |
17K03386
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
村上 正直 大阪大学, 国際公共政策研究科, 教授 (70190890)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 人種差別撤廃条約 / 人種差別撤廃委員会 / 反人種主義・不寛容に関する欧州委員会(ECRI) / ヘイトスピーチ / 私人間の人種差別 / 人種主義的動機 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、「人種差別の撤廃に関する国際条約」(「人種差別撤廃条約」又は「条約」)の日本への影響に注目し、同条約による日本社会の変容の現状を検証することにある。その背景には、日本による同条約への加入以降、日本の裁判所や、国及び地方の行政機関及び立法機関、さらに社会一般において人種差別に対してより厳しい目が向けられるようになったことがある。 この目的を達成するため、より具体的には、私人間の人種差別の禁止、ヘイトスピーチの規制及び被害者の救済(人種主義的動機に基づく行為に対する民事上の損害賠償額や刑事上の量刑の問題)を主たる検討対象とした。このような研究は、やがて訪れるであろう、日本社会の多民族化や多文化共生社会化のより一層の深化を見据えながら、人種差別撤廃条約を契機として、又はそれを媒介として、日本社会が変容しつつある、その現在を描き出し、将来を展望するという重要な意義をもつ。 本研究は、国際法的研究と国内法的研究からなるが、平成29年度は、主に国際法的研究を行うこととし、関係資料の収集と予備的分析にあたった。焦点は、欧州評議会の「反人種主義・不寛容に関する欧州委員会(ECRI)」の実行と、欧州人権裁判所の関係事例である。ECRIについては、ECRI の一般的勧告を網羅的に収集し、事項毎に若干の分析を行った。また、同委員会による、欧州評議会構成国内の関係立法・政策に関する監視活動にかかわる関係文書も一部収集した。欧州人権裁判所については、Nachova v. Bulgaria [GC](2005 年、Reports 2005-VII)に関係する裁判例を広く収集した。 なお、本年度では、私人間の人種差別の禁止とヘイトスピーチに関する裁判例の収集も開始し、判例集や判例情報誌には掲載されているものの他、関係した弁護士に研究への協力を依頼し、いくつかの裁判例も入手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上記のように、平成29年度は、研究第1年目ということもあり、関係資料の入手と予備的分析にあてられた。資料の収集という面では、おおむね研究計画通りの成果を得たが、その分析及びそれに基づく資料のさらなる収集という面は十分ではなかった。それは、研究代表者が、平成29年10月頃より体調が優れず、結局、平成30年1月4日から3月19日まで、約2ヶ月半にわたって入院生活を余儀なくされたことが最大の理由である。
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今後の研究の推進方策 |
国際法的研究においては、平成29 年度に収集した資料及び今後収集する資料に基づいて、ECRI 及び欧州人権裁判所の実行の検討を継続する。また、人種差別撤廃員会の実行についても検討をはじめる。もっとも、人種差別撤廃委員会の実行については、10年余り前の文書で、主に必要となるものは入手しており、ここ10年ほどの文書が主たる収集対象となる。 分析する資料は、ECRI 及び人種差別撤廃委員会については、当該機関の決定を示す文書の他、各国の報告書などにも及ぶ。取り扱う事項は、私人間の人種差別の禁止、ヘイトスピーチ及び被害者の救済の全般に及ぶ。また、可能な限り、他の条約履行監視機関の実行、特に米州人権裁判所や自由権規約委員会の実行や、若干の国の重要な立法・政策などの分析を積極的におしすすめる。 国内法的研究については、私人間の人種差別の禁止に関する立法例と裁判例や、ヘイトスピーチ関係の立法例と裁判例、被害者の救済に関する裁判例を網羅的に収集し、分析にとりかかる。 なお、本研究では、本研究が当初の計画通りにすすまない場合には、本研究の核心部分以外のところにおいて、適宜、検討範囲の限定を行うことによって対処することとしている。上記のように、研究代表者の病により、研究第1年目は、必ずしも計画通りには進展をみなかった。しかし、現在のところ、研究範囲の縮少など、研究計画の変更が必要であるとは考えていない。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度においては、相当額の次年度使用額が生じている。その理由は、研究代表者の病が最大の理由である。すなわち、そのために、①平成29年度後半に予定していた、国内外の研究者などの招聘や研究代表者の調査研究が不可能になったこと、また、②収集した資料の予備的分析が十分ではないために、研究代表者の指示に基づく資料の分類・整理のための人件費に次年度使用額が生じた。また、上記①の海外研究者の招聘に関しては、その招聘のための事務作業を行っていたところ、結局、関係組織(ECRI)の組織再編に伴い、適任の人材を得られる状況になかったことも、次年度使用額が生じた原因である。 ただし、研究の遂行計画には変わりはなく、海外の研究者の招聘や調査研究も平成30年度(及び31年度)にあわせて実施をすることも十分に可能であり、実際そのようにするつもりである。また、資料の分析がすすむと、その整理のための人件費が生ずることから、その使用も平成30年度(及び31年度)にあてることに無理はない。従って、研究が正常な状態に戻ることにより、本研究の遂行に必要な研究費として使用することになる。
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