研究課題/領域番号 |
17K03490
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
舩津 浩司 同志社大学, 法学部, 教授 (80454479)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 少数株主保護 / 上場子会社 / 商業登記の公示機能 / 事業分野の調整 |
研究実績の概要 |
退出権を通じた少数株主保護という観点からは、証券市場を通じた退出(少数株主持分の売却等)を通じた少数株主保護が重要となる。とりわけ、当年度において、上場子会社に対して親会社が不当な圧力をかけることによって親会社に有利な(子会社にとって不利な)事業分野の調整が行われようとしたのではないかという疑惑のある事案が生じたことから、上場(子)会社における証券市場を通じた少数株主保護のためのガバナンスの規律を優先して研究することとした。 まず、子会社上場審査および上場子会社管理に関する金融商品取引所(主として東京証券取引所)の規律を研究した。 さらに、これら一連の課題がわが国において重要なものとして認識される契機となったケースについて、個別事案に立ち入って検討を加えた。その際、わが国の少数株主保護についての重要なソフトローとなりうる、経済産業省の二つの研究会報告(「グループ・ガバナンス・システムに関する実務指針」および「公正なM&Aの在り方に関する指針」)を踏まえて、企業グループ内の事業分野の調整に関する現時点における妥当な規律内容を示した。 また、退出権あるいはそれ以外の制度(組織行為の差止めや無効の訴えの提起等)による少数株主保護方策の実効性の確保という観点からは、少数株主に提供される情報の充実が必要となるところ、そのような情報源の一つとして、商業登記が活用できないかが問題となる。この問題については、従来、商業登記の情報提供機能は会社の内部者たる株主を名宛人としたものではないとする考え方が有力であったが、そのような考え方を批判的に検討した。 加えて、諸外国の動向調査として、2019年12月に施行されたドイツの株主権指令国内法化法の検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
COVID-19の影響により、予定していた外国での調査研究が実施できなかったものの、証券市場を通じた規律のあり方に関する基礎的な研究を終えることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
COVID-19の影響により、当年度に予定していた外国での情報収集ができなくなり、その状況は令和2年度においても変わらない可能性があるが、その場合であっても、日本において入手可能な文献等を用いて、引き続き諸外国の最新の理論動向を注視していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年2月以降に外国での調査研究を予定していたがCOVID-19の影響によって断念し、代わりに日本国内でも研究可能なように資料等を揃えたことによって生じた差異である。金額はあまり多くないが、次年度に引き続き外国法調査に代わる資料収集のための費用に充てる予定である。
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備考 |
学会報告欄に記載の舩津浩司「有価証券上場規程の具体的検討(6)~子会社上場審査と上場子会社管理~」は、上記URLにその報告内容と研究会の議事録が掲載される予定である。
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